歩くの遅い。そう辛辣に飛ばした言葉をバネにするようにして三重内は足を早めた。俺は少しあとをついていく。
 足元に黒い影が見える。ちょうど正面から夕日が射していて、影の根元をぽつぽつとあいつが歩いていた。
 三重内。
 無視される。
 思い付きでノートを取り出し、そこに見開きで大きく2文字を書いた。
 すうっと息を吸って勢い良く前に掲げる。反応はない。こっちを見ていないのだから。
「ですよねー」
 答えない。足元には影がいた。
 信号待ちをする彼の頭が微かに揺れていた。頭のところを踏んづけて、それだけで俺は彼を捕まえてしまえたような気持ちになる。
「スキ!!」
 影が大きく歪んだ。
(影浦と三重内)



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