「2つずつはあるだろう」
 差し出された浅い箱の中で銀や金の包みが転がっている。僕たちは顔を見合わせ、ありがとうございますと口々に言って箱に手を伸ばした。
「チョコレートにはドーパミンという成分が入っていてな。これはいわゆる快楽物質で」
「あっ一個落とした!」
「何やってんだよー」
「僕ホワイトチョコ苦手」
「金は普通のやつだよ」
「他にも気持ちを落ち着ける効果が……」
 聞いてないな、というような顔をして監督はチョコレートに群がる部員の顔を眺め始めた。
 僕は金の包みを広げる。丸いチョコレートを口に含んだ。僕は聞いてるのにな、なんて思いながら。
(冴渡と栄都)



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