小さく息を吐く音で僕は顔を上げ、目の前の端正な顔を見つめた。
「今日だけ僕と付き合いませんか」
「……ええ?」
 突っ撥ねればいいのに彼はそうしなかった。受け入れる気なんかないくせに。僕だって、僕が好きなのは先輩じゃないんですよ。
「今日だけでいいですから」
「ううん……でも僕は、すごく甘えが出るかもしれないから」
 その言葉に対する疑問の声は脳に留まった。今日に限ってほしくないとでも? 笑わせるな。
 今日だけ、なんて約束を敷いたところできっと彼はそれを越えてくる。分かった上で僕はそれを強いた。どうして彼に恋をしなかったのだろう。
(田中+酒井)
(*おそいよ→)



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