半官(文章)
2010/02/26 23:44
※絵ではなくSSです。
拙い文章です。
そして現パロです。
『今日は少し遅くなる。すげー雪だけど、バス遅れてないよね?』
珍しく私の携帯電話が震えたかと思えば、それは同居人、半兵衛からのメールだった。
時間は夜8時。
半兵衛のメールにあるバス…それは駅から住んでいるマンションの付近まで通っているバスのことだ。
カーテンにそっと手をかけ、窓から外を見れば、雪が降っていた。
風はまったくないようで、しんしんと降っている。
今日はかなり積もるだろう。
全てを覆い隠すようにゆっくりと世界が白く染まる。
『くっそー、目の前で終バスにおいてかれた!!かんべーどのむかえにきてー』
そのメールが来たのはあれから2時間後。
やれやれ、と思い返信ボタンを押した。
『歩いて●●条のコンビニまで来い。コンビにに用があるから、ついでに傘を持って迎えにいってやる』
その後「官兵衛殿やっさしーv」などと茶化されるようなメールが返ってきたが、無視し、黒のロングコートを羽織ってマンションを出た。傘を2つ持つのも忘れない。
もう深夜11時だ。
つくづく自分は半兵衛に甘いと思う。
確かにコンビニ日用品を買う用事はあったが、別に明日でも良いじゃないか。別に寒い夜に出なくても良いじゃないか。そんな考えが頭の中でぐるぐると巡る。
結局は、私は半兵衛のことが好きなのだ。
その答えにたどり着くと同時にコンビニに着く。そこには、店内で週間漫画を読む半兵衛の姿。お早いご到着だ。まったく、こういう時だけしっかりしている。
日用品を買い、コンビニを出た。
先ほどより雪はおさまっていて「これならば傘など必要なかった」と思っていると半兵衛が
「これじゃ傘必要なかったね。でも、官兵衛殿と一緒に帰れるからま、いっか」
など満面の笑みで言われた。なにやら気恥ずかしいが、悪い気はしない。
むしろ……
私は半兵衛の一動一挙に翻弄される。
彼が私を好きだと言えば、私の顔の表面は少しも動かないが、内心喜んでしまう自分に、頭の中で自嘲の笑みがこぼれてしまう。
そして、同時に安心する。安堵する。
何に?
「にしてもすげー積もったよね。これ明日もバス遅れるって絶対!明日は土曜日だし家でゆっくりしてよーよ官兵衛殿?」
雪の道をぴょんぴょん跳ねながら先へ先へと進んでいく半兵衛。
表道路からはずれ、裏道に入るとマンションが近くなってくる。
同時に、
街灯も減り、
薄暗く、
降りゆく雪のせいで、
半兵衛が消えそうに見える。
先に角を曲がられて、半兵衛の姿が消える。
私は何を不安に思っているのだろう。
半兵衛が私から離れていくのを恐れている?
何故だろう。一人になることなど寂しくないのに。いや、暖かいカップがいつのまにか冷たくなるように。私はその寂しさを知っている。
ずっとずっと遠い昔に… … …
・・・いつ どこで だれと ?
得体の知れない感情が心の隅でちくりと自己主張しているのを見てみぬふりで、私も角を曲がる。
その瞬間「ぼすっ」という音。
「お、命中!」
緩やかに投げられた雪玉がコートにあたった。
「…何をしている」
「ん?一人雪合戦」
「くだらぬ。見た目だけではなく、中身も子どもか、卿は」
「うっわさりげなくひどっ!」
そんな半兵衛を置いてすたすたと歩けば再び「ぼすっ」という音。
今度は雪玉なんかじゃない、大きい。
ぴったりとくっつかれたまま両手が後ろから伸びてさらに密着する。しかしそのままお互いもつれながらも歩く。
「へへ、明日、官兵衛殿の誕生日でしょ?」
「………… … …」
「…あ、あれ?も、もしかして官兵衛殿忘れてる?」
「……あまり興味がないだけだ」
「そう…。じゃあ明日俺が盛大に祝ってやるよ。ごちそう作ってさ!」
「……………………卿がか?」
回されている腕をみやれば、大量の荷物。袋からあふれ出そうな物はよく見れば食材だ。
半兵衛は料理など出来ただろうか…。同居して日は浅いが…料理を作っている姿など一度もみたことがない。
不安な気持ちでいると小さな小さな囁き声。
「まえのときは いわえなかったからね…」
「何か言ったか?」
キッチンが汚れないだろうかと不安な気持ちがぬぐえないでいたせいでよく聞こえなかった。
「なんでも!おっし明日は早起きするぞ!」
2人白い息をはきつつ、真っ白な家路を歩いていった。
今が幸せなら良い。
こんな考えはまったく、私らしくない。
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覚えてる半兵衛と覚えてない官兵衛。
にしても…やはり文章書かれる方を尊敬します。
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