「進路希望…ね」
カタン、持っていたシャープペンを机に放り投げて溜息を吐く。まだ中一だというのにもう進路希望なんて取るんだ。先生は漠然とでいいなんて言っていたけど正直何も考えてない私には苦痛でしかない。
「はあ…どうしろっていうの…」
「なにが?」
教室には誰もいないはずなのに聞こえた声に驚いて顔をあげれば、目の前に狩屋くんが立っていた。ぜ、全然気づかなかった…。
「ああ、進路希望書いてたんだ」
「んーでもなんて書いたらいいかわからなくて、さ」
「適当でいいんじゃないの?」
「それが出来たら苦労しないよー」
再び溜息を吐けば狩屋くんは首を傾げてそれからニヤリと笑った。なんだか嫌な予感しかしないけど気づかないフリをして顔を背ける。
「ここはいっちょ『狩屋くんのお嫁さんになりた〜い』とか書けばいいんじゃね?」
「は…はああ?なに言ってんの!?」
お嫁さんなんて今時誰も書かないわ!私がそう言えば狩屋くんは私を指差してケラケラと笑う。な、なにがおかしい…。
「だって名字さん顔真っ赤」
「そっそれは!狩屋くんが変なこと言うから…!」
「ククッ…ごめんごめん」
「笑うな!」
目に涙を沢山溜めて笑い転げる狩屋くんに若干苛立ちを隠せずにいると狩屋くんがやっと起き上がった。
「でもさ、いつか、名字さんとそうなれればいいなって思ってる」
「え…?」
「じゃ、頑張って」
とんでもない爆弾を投下して狩屋くんが教室から出て行く。とりのこされた私はただ呆然と立っているしか出来なかった。狩屋くんのばか、あんなこと言われたら意識しちゃうじゃん…。
いつかのおはなし
≫Masaki.K…湊さま