ぷくぷくとシャボン玉を吹かし、青い空に透明な宝石が広がった。シャボン玉を吹かした本人は、楽しそうにその光景を眺めるわけではない。ベンチに座って、シャボン玉を吹かしながらもサッカーの練習をしている様子を見ているのだ。
喜峰岬がフライングフィッシュを放ち、ボールはゴールの中へと吸い込まれた。1人個人での練習故に、ボールを止める役割をもつゴールキーパーはいない。回転を失ったボールは、そのまま地面を空しく転がる。シャボン玉を吹かしていた名字が、その様子を見て鞄から海王サンドとスポーツドリンクを取り出した。

「はい、海王サンド」

ベンチ側に戻ってきた喜峰に、名字はそれを差し出す。ふわふわと笑う名字につられ微笑んだ喜峰は、小さくお礼を言ったあとそれを受け取った。名字はその様子を見て、またシャボン玉を吹きはじめる。

ふわふわふわふわ。

日が傾き初め、シャボン玉は橙色の光を浴びる。先ほどとは違う宝石の出来上がりだ。

「きれいだな」

海王サンドを食べている途中の喜峰が、シャボン玉を見てぽつりと呟いた。隣にいた名字は、その発言に一瞬目を丸くするも微笑む。そしてまた、ぷくぷくとシャボン玉を作りはじめるのだ。ちゃぷちゃぷと、洗剤を水で埋めた液体に、先に切り込みを入れたストローをつける。

ぷくぷくぷくぷく。
ふわふわふわふわ。

角度によって色が変わるシャボン玉。固定での色などつけれない。あえてつけるなら、虹色だろう。
それほど時間は経っていないが、喜峰が鞄を肩にかけた。

「帰る?」
「ああ。もう日も暮れるしな」

喜峰の言葉に頷き、名字はシャボン玉の液を溢す。そして先き歩き始めた喜峰の、後ろ姿を追いかけた。



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