ベッドの中で、ミニチュアなじゃれ合いっこをするの、僕凄く大好きなんだ。可愛いパジャマを着た可愛い名前が見れるし、ずっとくっついてられるし、…何より二人っきりだし。昼間だと名前にちょっかいを出す邪魔者が多くて困っちゃうんだよね。主にサルとかさるとか猿とかさ。

「ふぁ…‥あ…」
「あれ、…ふふ…‥名前、もう眠いの」
「そ、じゃない‥…まだ、起きてりゅ‥」
「もう…呂律回ってないじゃないか、‥ほら。無理しないで、もう寝よ?」

小さい小さい名前の頭のてっぺんに手を乗せて、名前を絶対絶対痛くしないように力なんてほぼ皆無な状態で其処をポンポンする。ね、って、さっきまでしてた雑談の時の声よりも、少しだけトーンを低くして、落ち着いた優しい感じの声をイメージしつつ名前に念を押してみた。‥…ああ、もう…やだ、って‥困るなあ。何でそんなに可愛すぎる我が侭の仕方をするんだろう。そんな可愛い事を、可愛い声と可愛い仕草で言われたら…何にも言えなくなっちゃうよ‥。夜更かしさせたくないのに、瞬きの回数が多くなってきた半開きの目を、何回も何回も瞼を一生懸命擦ってるその小さな手を、もっと僕に付き合わせたくなっちゃうじゃないか。
そんなに可愛いことするなら、ちゃんと僕の気持ちも汲んでほしいな…。可愛いことして、こんなに僕だけドキドキさせるなんて…無責任だよ、‥ズルいよ。

「うー‥…やっ、‥」
「んー‥…そうは言ってもなあ、‥…あ。」
「うん?」
「じゃあ、こうしよう。…僕が眠いから、名前付き合って」

こつん。二人で半分こしてる横幅が大きな枕の上に横向きに頭を乗せてるのをいい事に、形が良くて見る度についつい触りたくなっちゃうおでこに、僕のを合わせてみた。至近距離で、ダメかな…なんて少し不安そうな声で聞いてみると、‥…ふふ、出た。名前の「ずるい」肯定。恥ずかしがってる時に出してくれる了承の仕方だよね、コレ。顔を真っ赤にして、目線をつつ‥と斜め下にずらしながら、少しだけ悔しそうな声でそう呟くんだ。
うん、勿論…名前は僕からの頼みが断れないって事が分かっててやってるんだよ?ごめんね、だって可愛いんだもん。ちょっとだけずるくなってみたくもなるよ。

「ねえ…名前、‥抱き締めても、いい」

なーんて、聞いてるくせに答えを聞く前に(元々答えは知ってるけど)、シーツと名前の間、そして名前の括れてる脇腹の真上に腕を伸ばして、名前が苦しくならないように少しだけの隙間を僕達の間に挟んで抱き締めた。トンと、とても僕と同じシャンプーを使ってるとは思えないくらいに甘い匂いがする頭のてっぺんに軽く顎を乗せて、ふぅー…と、少し眺めの溜息っぽくない溜息を吐く。…緊張してしまったのか、名前の肩が力んでくっと顎のラインに添えられたのが分かった。僕のお粗末で薄い、とても胸板と呼んじゃいけないような部分に丁度名前の顔があるから、チラリと瞥見してみれば、僕の見解が正しいのか間違ってるのかなんて直ぐに分かる。‥…ふふ、そうだよ。これも、分かっててやってるんだ。
ほら…今日も一日、たーくさんサルにちょっかい出されたでしょ。…名前はよく僕を優しさの塊人間みたいに言うけど、生憎僕は全然そうじゃないんだ。表に出さないようにしているだけで、これでも毎日毎日かなーり、怒ってて、かなーり、嫉妬してるんだよ?…それの腹癒せがこれだったら、カワイイものじゃないか。だから、確信犯なイタズラは止めないよ。オシオキっていう意味と‥…あとは、純粋に楽しいからね。

「ふふ、どうしたの。何だか肩に凄く力入ってるけど」
「だだ、だって‥…だって、ふぇいっフェイが…!」
「僕はなーんにもしてないじゃないか、もう‥名前ったらヘンなの」

どれだけ名前が可愛くても、あくまでも意地悪を突き通す僕は知らんぷりをし続けて…あろうことか名前をこのまま無理矢理眠らせようとする。…‥うん、自分で言うのって、何だかイタイかもしれないけれど‥なんか、あれだね。僕って…実は人間として最悪だったり?
顎を外して若干見下ろすような視線を向けながら、名前の頭のてっぺんに手を乗せて…髪の毛をさり気なく梳きながら後頭部まで手を滑らせて…またてっぺんに乗せて手を滑らかに落としていって…を繰り返す。名前はこうやって優しく頭を撫でられると直ぐ眠くなっちゃうんだよね‥…、…ああほら、さっきまでは警戒心マックスな小動物みたいだったのに、もう目がとろんとしてる。可愛いなあ。まるで小さい子供みたいだ。

「ふふ、いいよ…我慢しないで。…‥いい子におやすみ」
「ん…‥ー…、…‥ふえい、‥」
「ん。なあに、名前。」
「…また、明日…‥ね、」
「うん、また明日。また明日、たくさんの事をしようね」

そう言ってからおでこにちゅうしてあげると、ふにゃぁって…安心しきっていてこの上なく嬉しそうにはにかんだ、溶けた生クリームみたいな、笑顔というもの自体が零れ落ちてしまいそうな、そんな淡くて丸い笑顔を見せてくれた。
ああ、ああ‥…僕の日常って、何て素敵なんだろう。大好きな名前を抱き締めながら朝を迎えて、名前の隣でご飯を食べて、名前と一緒にお風呂に入…‥るのはまだしてないけど髪の乾かしあいっこは毎日してて、夜を迎えるのも名前を抱き締めながらだ。こんな日常より素敵な事なんて‥…多分、名前と結婚することと、名前との間に子供が出来たこと、‥くらいしかないだろうなあ‥…、…あ。後は新婚旅行とか…嗚呼、子供が出来たら子供の入学式とかも凄く幸せな気持ちにさせてくれるんだろうなあ…。きっと僕と名前は二人揃って泣いちゃうんだろうな…嬉しくて。

(あ、どうしよう…にやける。)

一日、また一日って…日が過ぎていく度に、また名前を好きになって…。嬉しいことが当たり前に、当たり前が日常に、日常が必ず必要なことになって…。そして、その必ず必要なことがどんどんどんどん、レベルアップしていって…‥。ああもう、名前っていう女の子はどれだけ僕を幸せにしてくれるんだろう。
僕…こんなに幸せでいいのかな?なんだかそのうち幸せ太りしちゃいそうなんだよね。‥…あ、コレ、割と本気ね?

「おやすみ、名前。‥夢の中でも逢えるといいな‥…なんちゃって、」

なんて寒い(半分だけ)冗談な言葉を発しつつ、ぎゅっと名前を抱き締め直した時。ふと視線を向けたカーテンの綴じ目から、一瞬だけチラリと流れ星が見えた気がして。
これからも名前とずっとずっと一緒に居られますように…って、考えるだけでお腹いっぱいになっちゃう幸せなお願いをしながら、僕もそっと、目を閉じた。




/「甘党お星さま」

(‥…でさ、そしたらさっほんとに夢の中に名前が出てきたんだよ〜!)
(ふぅん、そ。)
(はぁああ‥…夢の中でも名前は可愛かったなぁ…)
(今日のフェイは何時も以上にうっざいね)
(今日のサルは何時も以上に僻んでるね!)
(‥…よしきーめた、当分フェイと名前は別行動させるから)
(えぇえっ!)
(名前の所属チームもガルからラグーンに変更ね)
(何それっ!)
(え、ただの嫌がらせ)
(ひ、酷い‥……そんなことしたら僕、名前不足で死んじゃう…)
(じゃあ僕は名前不足で一体何回死んでることになるんだろうね)
(何なのさサル!まだ名前を諦めてないのっしつこいよッ!未練がみしいよっ女々しいよ!)
(ハッ、見た目が女々しい君からメメシイなんて言葉を聞くなんてね)
(っだいたいサルはいっつも―…!)
(なにさっフェイこそ―…!)
(あー今日もフェイとサルが賑やかで平和だなぁ)


(どうやら此方が本当のニチジョウのようです)


≫Fei.R…ぼるぼっくすさま
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -