暑い。暑すぎる。
そりゃ夏ですから当たり前なんだけどね。でもこれは暑すぎる。
店長の機嫌がよくて今日は早く上がらせてもらった。そして涼しい店内から暑い外に出て家路に急ぐ。
そんな私に友達からのメール。
『佐伯先輩、こっち戻ってきてるらしいよ。』
メールを閉じるとぼーっとした頭で思い出した。
佐伯先輩と言うのは中学時代同じ学校でアイドルのような人気を誇った人だった。私もその中の一人でキャーキャー言っていた一人だった。
そんな佐伯先輩はそれはもうレベルの高い大学に進んで、一流の企業に就職したと聞いていた。そんなあの佐伯先輩が、地元に、戻ってきてる!?
「・・・・ないない。」
私はケータイを鞄にしまってそう呟いた。
友達には悪いけど何かの間違いだ。都市伝説だ。きっとこの暑さにやられてしまったに違いない。きっとそうだ、この、暑さ、に・・・・・・。
目を覚ますと、木目調の天井が見えた。そして、爽やかなミントの香り。
「あっ、きづきましたか?」
鈴の鳴るような声がしたかと思うと、誰かが私を覗き込んでいた。だんだんと意識がしっかりとしてきて私を覗き込んだ顔を見て唖然とした。
「・・・・あれ?」
そこには、佐伯先輩がいた。しかも小さい佐伯先輩。
大きな綺麗な瞳で私を覗き込んでいる。
・・・・完全に私の思考が停止した。
「えぇぇぇぇぇ!!??」
「わぁ。」
勢いよく起き上がった私に傍らにいた佐伯先輩がベットから落ちた。
・・・・どうやら暑さにやられたのは私の方らしい。小さい佐伯先輩の姿まで見えるようになるとか・・・・どんだけ残念なんだ自分。
「おねえさん、だいじょうぶですか?」
起き上がってひょっこりまた私の横に来た佐伯先輩はそう言ってにっこりとほほ笑んだ。
「な、何で・・・。」
「はい?」
「何で、佐伯先輩が、ここに?」
私がそう言うと小さい佐伯先輩は頭に?を浮かべた。
「わたしはさえきですけど・・・・・あっ、もしかしてパパの・・・。」
「あ、気がついたんだ。」
ドアから現れた人物にまた私は絶句した。
「さ、佐伯先輩が、二人!!??」
もう一人、佐伯先輩が現れた。私より2つ上だから・・・・30歳過ぎているとは思えないこのカッコよさ!
何だかくらくらしてベットに倒れこむと、心配そうな二人の佐伯先輩がまた私を覗き込んでいた。
分かった、夢だこれ、私は夢を見ているんだ!!
「大丈夫かい?」
「は、はい・・・・・。」
「道端で倒れてたんだから、安静にしてないとダメだよ。はい、ハーブ水。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
「ミントはたいおんを下げるやくめをするんですよ。」
二人の佐伯先輩はそう言って笑うと、私にミントが浮かんだグラスを差し出した。一口口に含めば爽やかなミントの香りが鼻を抜ける。
「ねぇ、俺の事知ってるって事は君もしかして六角中の卒業生?」
「は、はい。」
「そっか、道理でどこかで会った事があると思ったんだ。」
そんな事を言って笑う佐伯先輩は記憶の中の彼とまったく一緒だった。
先輩は近くの椅子に腰かけると、長い足を組んだ。ただの噂でも、都市伝説でもなんでもなかった、まさか本当にあの佐伯先輩が帰ってきていた。しかも目の前で微笑んでいるなんて!?
「パパだめだよ。おねえさんまだあんせいにしてないといけないんだから。」
「そうだったね。もうしばらくゆっくりしていくといいよ。」
「え、でも・・・・・。」
「俺はお店あるから、何かあったらさくらに言ってくれれば大丈夫だから。」
「いや、でも・・・・。」
「俺の娘は俺よりもしっかりしてるから、安心してよ。」
佐伯先輩はそう言うと隣にやってきた小さい佐伯先輩の頭を撫でた。
・・・・・え?ちょっと待って、今、佐伯先輩、何て言った?
「え、娘、さん、ですか?」
「あ、うん、そうだよ。さくらって名前なんだ。」
可愛いだろ?とつづけながら小さい佐伯先輩・・・・・さくらちゃんの頭を撫でる佐伯先輩。え、娘って、お子さんって事!?
私は思わず持っていたグラスを落とした。
「もう森には行かない」のこしあんさまより頂きました。
サエさんかっこいいです! そして娘ちゃんがめちゃくちゃかわいいです!
こしあんさん本当にありがとうございました!!!