説明すると長くなる奇妙な経緯で俺のアパートに住むことになった彼女は、驚くほど俺の邪魔をしない女の子だった。
ほとんど話さないけれど暗い訳ではない。
さらりと家事をするけれど行き過ぎたお節介はしない。
空気のような存在感は今まで彼女が育ってきた環境と無関係ではないと思った。
研究発表の準備で徹夜している時、バイトで遅くなった夜、彼女がさり気なく差し出してくれるコーヒーにいつの間にか癒されている事に気付く。
「──そうだ。今日は午後休講になったから早く帰るよ。たまには二人で散歩でもしようか」
きょとんと目を丸くした後、じわじわとほどけるようにやわらかくなる彼女の笑顔。
ああ、今日は走って帰ってこよう。