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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

6.危機









 撤収だ、とスティーブンの声が夜空に響く。



「各自散開し、ポリスを撹乱した後“執務室”に集合」彼はザップの方へ顔を向けた。「ザップ。お前はお師さん達をお連れしてくれ」

「ええッ!?」



 とても嫌そうな反応だった。またご機嫌を損ねたら──とかそういうことは考えてないんだろうな、ザップはきっと。

 と、汁外衛氏がシャアアシャキャアアと喋った。ザップが通訳する。



「良い。儂はもう去る」ちょっと嬉しそうな顔でザップが振り向いた。「──みたいすよ?」

「そうですか? 十分なおもてなしも出来ず、申し訳ありません」

「気にするな。端から期待してはおらん。だが、貴様らは対血界の眷族ブラッドブリード戦において塵芥程度の見所がある」



 汁外衛氏は続ける。



「合格じゃ」

「……は」とザップ。

「こいつを任せたぞ」

「え?」と指差された謎の魚っぽい彼。



 そして、汁外衛氏は私に振り向いた。

 まさか此方を見るとは想定しておらず、知らず肩が跳ねる。



「小兎よ」汁外衛氏の口から紡がれたのは日本語だった。「確かに“鬼”は禍を引き寄せる。だが、それに打ち勝つも打ち負けるも貴様次第じゃ」

「え────」

「今日の心を忘れるな。恐怖に呑まれるな。さすれば恐れることはあるまい」



 気張れよ、と汁外衛氏はザップたちに向き直る。
「ではな」言うだけ言って、彼は忽然と姿を消した。

 ……夜風が私たちの間を吹き抜けていく。もっと正確に言うなら、弟弟子さんと私たちの間を。



「……………………」

「……………………」

「……………………」



 全員が、状況に置いていかれていた。

 その中でも一等付いていけていなかったのは、たぶん──一番の当人だ。



「……聞いて、ないです」



 ふらり──ばたん。

 弟弟子さんは、可哀想なぐらい力なく倒れ込んだ。



「おわ、マジかコイツ」

「……過労とショックのダブルパンチだな」



 冷静な分析をしている場合か、スティーブン。

 パタパタと倒れた彼に駆け寄り、何度か頬を叩く。反応なし。命に別状はないだろうが──怪舌で無理矢理起こして歩かせるのも酷だろう。

 クラウスさんは気が引けるし、スティーブンは何となくアレ。アレったらアレ。──あの謎の巨体はいつの間にか居なくなってるし、チェインに頼むのも……となれば、残るのは一人だけ。



「ザップ、運ぶの手伝ってよ」

「はァ!? 何で俺!?」

「アンタの弟弟子なんでしょ。いいじゃない、別に。っていうか私が手伝ってあげるだけ有り難いと思いなよ」思い付いて、ほら、と付け足す。「一発殴るのチャラにしてあげるから」

「まず何で俺がお前に殴られるの前提なんだよ!?」




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