最近、よく坊主頭の少し厳つい顔をした多分後輩と思われる少年をよく見る。初めて見たのはそう、まだ私が2年の時の購買でだ。顔に似合わず甘いもの好きなのか、彼が手にとったのはメロンパン。それだけ買って帰って行った。顔に似合わず可愛い性格、それが彼の第一印象。


「わわわわわ私お金もってません!!!」

「………」

「………」


3年になって久しぶりに坊主くんを見たと思っていたのになんてタイミングの悪い。でも一部始終を見ていた私にはわかるよ。君は女の子に道を教えてあげようとしていただけなんだよね。逃げていく女の子の背中を見つめる坊主くんの目にはうっすら涙が浮かんでいた。ご愁傷さまです。右手で握っていたコーヒー牛乳を彼の左手に添えた。





* * *





あれから坊主くんには会っていない。購買にも行っていない。気まずい雰囲気になってしまうよりマシだ。あぁ、でも気になる。私余計なことしたかな。


「大地さーん!スガさーん!」


1人うんうん唸っていると、隣と斜め前に座る澤村くんとスガくんを呼ぶ大きな声。いったい誰だ。どこか聞いたことがあるような声の先に2人は軽く返事をして近づいて行く。いまいち姿はよく見えない。誰だっけ、この前聞いたような…。


「…………」


ダメだ、思い出せない。ということはそんなに重要でもないんだろう。それより今はこの課題を終わらせることの方が優先だ。目の前の参考書に集中しようとしているのにモヤモヤしてなかなか頭がうまく働かない。声の方に目線を戻すと微かに見える丸い頭。ん?丸い頭…?
スガくんと澤村くんの間から顔が見える。思わずそらした顔が捉えたのは確かにあの私が考えていた坊主くんだった。


「あー!!」

「!?」

「あん時のコーヒー牛乳!」

「えっ、あの、」


戸惑っている私を見かねてスガくんと澤村くんが後輩なんだよと教えてくれた。ついでに私のこともクラスメイトと伝えてくれた。


「えっと、麻野結月です」

「田中龍之介っス!」


よろしくお願いします麻野さん!と言って田中くんは腰を90度に曲げた。





((頭ぐりぐりしたい…))

(麻野さん?)

(あ、うん、よろしくね)



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