3年になって新しい友達が増えた。名前はスガくん。菅原くんって呼んでいたがなれないと言われたのでスガくんになった。
「麻野、おはよう」
「おはよう、スガくん」
せっかくなので私も呼び捨てにするよう頼んでみたら少し照れたようにはにかんで麻野と呼んでくれた。きっとそのときの顔は一生忘れない。
「澤村くんもおはよう」
「あぁ、おはよう」
澤村くんとは偶然3年間とも同じクラスなので男の子の中では1番仲がいいかもしれない。それになにか縁があるらしく今も席が隣通しなのである。その澤村くんの前がスガくん。なかなかいい席だと思う。
「麻野今日数学当たるぞ」
「え、なにそれ聞いてない」
「ハハッ、言ってたよ」
ありがとう、澤村くん。急いでカバンから教科書を取りだそうとするが、青いそれが見つからない。確かにノートはあるのに。もう1回ゆっくりしっかり確かめる。でもないものはないらしい。
「………澤村くん」
「ん?」
「数学の教科書見せてください…」
「ん、ほら」
1時間目は数学だからか机をくっつけてその真ん中に教科書を半分こ。どうせ教えろって言うだろと澤村くんは笑った。はい、その通りです。さすが3年間一緒なだけあってわかっていらっしゃる。意識を数学に戻すが早速わからない。
「澤村くん、ここ…」
「どれどれ」
「っ、大地!」
突然大きめの声でスガくんが澤村くん呼んだもので思わず驚いた。澤村くんも疑問符を浮かべながらどうしたんだよと尋ねる。一方のスガくんは私と澤村くんを見比べてあーとかそのとか少しどもっていた。
「澤村」
「清水?」
今度は誰だ。また澤村くんだと呼ばれた方をチラリと見るとすごい美人さん。澤村くんの彼女だろうか。すると澤村くんは席を立って出ていってしまった。
「…スガくんどうかしたの?」
「ごめん…」
急に澤村くんの机に突っ伏したかと思えばなぜか謝られた。
「なんか麻野と大地が仲、良さそうだったから…」
「え」
もう一度ごめん、と謝ったスガくんは澤村くんの変わりに教えてくれると言うので熱が集まった顔を縦にだけ動かした。