1つ学年が上がり私はついに3年になった。受験だよ、嫌だ嫌だ。いまいちぼんやりとしか機能していない目線の先には黒板の前に立つ先ほど決まった学級委員。私としては放課後にあんまり活動がない(司書の先生が全部やってくれる)図書委員を是非したいものだ。誰も手を挙げないようなので重い右手を挙げると拍手喝采。これで私の平和は手に入れた。図書委員は2人なので親友と呼べる友人に目線を送ったが無視された、くそ。


「俺、図書委員やります」

「え」


ガタンとなった音の方を見ると斜め前の確か、菅原くん。記憶力は悪くないだろうから間違ってはいないだろう。またも起こる拍手にいまいち頭がついていっていないような気がしたがふいに菅原くんが振り向いたびっくりして思わず身を強ばらせてしまった。


「よろしく、麻野さん」

「え、あ、うん。よろしくね」


もちろん気のきいた返事なんてできるわけがない。





* * *





放課後、珍しくなかったバイトに被らず行われた委員会。委員長にもならなかったし万々歳である。菅原くんは真面目そうだし、ある意味よかったかもしれない。
さぁ、帰ろうと意気込むと先生が私と菅原くんに声をかけてそのままずっしりした資料を手渡された。


「なんですかコレ」

「資料」

「だから?」

「頼んだ」


なにそんな言い方しても可愛くない。正直イラッときたが黙っておいた。ちらりと菅原くんを盗み見すると少し口元をひきつらせながら苦笑いしていた。先生はお構い無しにホチキスを置いてどんどん遠くなっていく。あいにく先生を殴るための3本目の腕は持ち合わせていない。
仕方なく教室に戻り菅原くんと向き合うようにして座り込む。バチン、バチンとホチキスを止める音と途切れ途切れの会話の音しかなかったけどこれはこれで静かていいかもしれない。ふと目線を手元から菅原くんの奥に移すと目に入るエナメルバッグ。


「菅原くんってなに部?」

「バレー部だけど」


はじめて知った…って違う。それがどうかした?と首を傾げる菅原くんはとても可愛らしかった、がそれも違う違う。


「今日部活は?」

「あるよ」

「えっ、じゃあ部活行きなよ」

「大丈夫だって」

「いや、だって私今日バイトないし」


手を止めようとしないので資料を奪おうとすると、にっこり笑った菅原くんがホチキスを持った反対の手で私と資料の間に割り込んだ。逆に3分の1ぐらいの資料を自分のもとに置いてしまった。目線は移さないで作業を続けながら菅原は言った。


「女の子に1人でさせるわけにいかないでしょ」


少し乙女思考が入っている私には攻撃以外のなんでもなかった。



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