私は部活といってもマネージャーなのでとりあえず潔子さんのお手伝いを!と意気込んでいたのに運悪く潔子さんに会うことは果たされず仕舞い。マネージャー業は中学でもやっていたのでできないこともないが、潔子さんに仕事内容を教えてもらいたかった。


「広瀬、広瀬!」

「田中先輩?」


なぜか窓際にいる田中先輩が小声で呼ぶので駆け足で近寄ると、あからさまに変な咳をし始めた。なにかあるのか、開けられた窓の外を見ると先ほど勝負宣言をした日向くんと影山くんの2人の姿。あぁ、なるほど。


「明日も朝練は7時からですよねーっ!?」

「え、うん。そうだけど」


イキナリなんだよ、と菅原先輩は明らかに怪しんだような目をする。菅原先輩と田中先輩を写していたその目線をちらりと壁を挟んだ向こうにいる2人に移すと、朝5時と確かに言った。それを確認して田中先輩のフォローに向かう。きっと菅原先輩は勘がいいから気づく気がするけど。


「私が聞いたんですよ。田中先輩わざわざ確認してくれたんです」

「アッ、そーなんスよ!コイツが聞いたんで」

「ふーん?」


まぁいいか、と丸めていたネットをしまいに菅原先輩は窓と反対方向に歩いて行ってしまった。ふぅと田中先輩が息をついて背中と壁を合わせる。


「5時、ですって」

「起きれっかなー…」


田中先輩と同じように力を抜いて息を整える。……私低血圧なんだけどなぁ。





* * *





眠いと言うより寒い、に近いかもしれない。春先の今じゃまだ息も白いし防寒具は忘れられない。下宿先が学校に近くて心からよかったと思う。


「見つかったらやべぇだろバカか!」


日向くんの少し高めの声が聞こえる。田中さんはまだ来てないようなのでその事を伝えようと、おはようと声をかけると2人はまるで幽霊でも見たかのような顔をして勢いよく振り向いた。


「あっ、昨日の!」

「お前昨日の…」

「私、マネージャーなの。広瀬潤、よろしくね」


まず日向くんに手を出すと大きく名前を言っていつもの笑みで返してくれた。次に影山くん。諦め半分だったけど負けじと出していたら影山、とやんわり握ってくれた。


「友達には翔ちゃんとか呼ばれてたからそう呼んでくれると嬉しい!」

「わかった、翔ちゃんね!……影山くんは?」

「……そのままでいい」

「そう?」


少し残念がっているとすぐに田中先輩が来てくれた。田中先輩コールが5分ほど続いたが近所迷惑なのでやめてもらったのは言うまでもない。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -