「そオオオらアアア!!!」

「!」


月島くんの挑発にのっていつもよりパワーのある田中先輩はとても調子が良さそうだ。10p以上ある体格差ももろともせず、その腕を吹き飛ばした。


「日向!!」


ついに影山くんが翔ちゃんを呼んだ。翔ちゃんが高く、高く飛んだ。周りから起こるざわめき。


「いけ…っ!」


思わず閉じた目に逆らって入ってきたバチッというなにかが弾かれた音に顔をあげる。ネットを見ると翔ちゃんに覆い被さるような、高い高い壁。次々とブロックにかかっていくアタックに翔ちゃんに焦りが見えた。
山口くんが失敗して、次は影山くんのサーブ。確かに影山くんのジャンプサーブは強い。それでこの雰囲気が和らげばいいけど、でもあっちには。
音を発てて向こう側のコートに飛んでいったボールは地面につかない前に大地先輩によって月島くんに繋げられてしまった。相変わらずの安定したレシーブ。


「君、影山が何で王様って呼ばれてるか知らないの?」

「?こいつが何かすげーうまいから…、他の学校の奴がビビってそう呼んだとかじゃないの?」

「そう思ってる奴も結構居ると思うけどね」

「……?」


月島くんが笑った。なんで、今そんな話をするの。影山くんの手がきつく結ばれていく。


「自己チューの王様。横暴な独裁者」


そうか、影山くんはチームメイトから拒絶を。でもそれはきっと勝てないのをわかってしたことで。
月島くんの言葉は減らない。田中先輩が口を挟もうとするが大地先輩によって止められた。
トスをあげた先に誰もいない。そんなの、怖い以外のなんでもない。独りで戦うのがどれだけ怖いか、私にはわかるから。


「えっ、でもそれ中学のハナシでしょ?」

「!」

「俺にはちゃんとトス上がるから別に関係ない」


そうだ、今は独りじゃない。独りじゃないもの。


「影山!!!」


──ほら、そこにいる。


「いるぞ!!!」


影山くんの目にうつった。瞬間、田中先輩にあげようとしていたトスの方向を足の回転を利用して翔ちゃんにあげる。かすられたそれはへろへろと曲線を描いて地に落ちた。


「中学のことなんか知らねぇ!!」

「……翔ちゃん…」

「俺にトス、持ってこい!!!」


みんなが目を見張って驚いている。そうだ、そうだよ。


「影山くん!」

「!」

「影山くんは独りじゃない!みんなが、翔ちゃんがいる!!」


だから、安心してトスを上げて。
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