なんて、暑い。
走る、ひたすら走る。なのに、どうしても出ていかない。暑い暑い暑い。
なんて、嫌な季節。
「───赤司くん、」
「紅葉?」
「今から外周?」
体育館に向かって走っていたら目的の団体を見つけて、なんてグッドスタイミング。一緒に走らせてもらおうと赤司くんに承諾してもらう最中、特に目立つカラーリングの集団が。早速見つかっていつも通り黄瀬くんにタックルされて色々飛び出そうになったけど、ぐっと堪えて体制を持ち直そうとしたところ黒子くんが手をさしのべてくれた。相変わらず紳士。黄瀬くんは青峰くんがしばいてくれてたのでよしとしよう。
「なんだ、お前も行くのか」
「暑いからね、」
目の前にいる緑間くんはしわを寄せた眉間にうっすらと汗を浮かべていた。不謹慎にもいいなぁと思う。青峰くんたちだって試合して汗をいっぱいかけるし、赤司くんはあんまり汗かかないけど平然としてるし。
…汗をかけない私としては羨ましい限りだ。体質のせいなのか、私はなかなか汗をかかない。いや、かけない。夏は熱が体から出て行かなくて辛いのなんの。だからなんとしてでも無理矢理発汗させなきゃいけないんだ。
「よっし、目指せトップ」
「紅葉ちん、すごーい」
「いや、紫原くんも頑張ろうよ」
「紫原がやるわけねぇだろ」
顔をあげると、後ろにはさっきまで黄瀬くんをしばいていた青峰くんの姿。いつのまにいたんだと疑問符を浮かべている最中、鼻で笑われて宣戦布告。私に勝負を申し込むとはいい度胸だ。ニヤリとほくそ笑んで赤司くんのスタートを待つ。
「じゃあ、行くぞ」
「うおおおおお!!!」
「青峰くんうるさい、」
全力でスタートを切った青峰くんに続いて私も走り出した。
* * *
「………負けた…」
「あー、疲れた」
「…紅葉っち、どういう体力してるんスか…!」
私のあとからちらほらとゴールしてくる青峰くんたちを見ると肩で息をしていてつらそうだった。自業自得だ、私について来ようとするから。
ふー、と一息つくと額から頬にかけて垂れてきたそれ。やっと出てくれたおかげで倒れなくてすんだ私に疲れは優しくなかった。
流して出して、それから
(ありがとうね、赤司くん)
(もう、いいのか?)
(うん。青峰くんたちも楽しかったよ)
(ぜってー次は勝つ!)