毎年恒例の夏休みが終わる8月31日。多くの人が終わりが見えない宿題と格闘しているというのに私はいったいなにをしているんだ。がさりと手に持ったそれを見つめて帝光中への道を急いぐ。
なんで私がこんな灼熱地獄のなかバカなことをしているのかといえば今日はそう、まっくろくろすけこと青峰くんの誕生日なのだ。厄介な日に生まれやがって。せめて1日遅れて生まれてくれば学校ついででいいのに。いや、本来なら明日でよかったんだ。今日はメールだけで済ませる予定だった。なのにあのまっくろくろすけの奴が1週間前からカウントダウンメールなんて送ってくるからメールだけじゃ済まされなくなってしまったんだよ。しまいには『明日部活あるから体育館までプレゼント持ってこいよ』とかいう始末だ。なんでもらうこと前提なんだよ。いや、あげるけどさ。
「ちわー」
「紅葉さん、どうしたんですか」
「やぁ、黒子くん。青峰くんいる?」
少し考えるような仕草をした黒子くんは妙に納得したような顔になり青峰くんを呼びに行ってくれた。そうか、ここにも私と同じ被害者がいたのか。にしてもよくこんなサウナ状態のなかで動けるな。その中から1人、ずば抜けた濃厚な肌色をしたのが出てきた。
「紅葉!」
「青峰くんハッピーバースデー」
胸の前で手を叩くと小さくはにかんだような純粋な笑みを見せてくれたのでどこか暖かくなった。じゃあプレゼントを…と右手をあげようとするとなぜか途中で急停止する。なんだまた君か、黄瀬くん。
「……青峰っち今日誕生日なんスか…?」
「おー」
「聞いてないっス!」
驚いた私は思わず黒子くんを見たが彼も同じようだ。つまり、黄瀬くんには誕生日カウントダウンメールを送ってないのか。くそ、だったら私じゃなくて黄瀬くんに送ってほしかった。
「言ってねーもん」
「なんで俺だけ!」
「うっせーな」
騒ぐ黄瀬くんを無視して持っていたそれを青峰くんに手渡すと嬉しそうにあさりだした。我ながらいいセレクトだったと思う。
「…んだこれ」
「『目指せ美白美人!マジカル☆しろりん』だよ。目指せ美白美人!」
「紅葉、お前喧嘩うってんのか!」
「私売人じゃないんで」
うっぜー!と騒ぎ立てるから仕方ない。反対側に持った本当のそれを差し出した。
サマーラストデイの宅配便
(ゴリゴリくんかよ!)
(実は自作だったり)
(は!?)
(嘘だよ)
(てめっ)