半強制的に勉強をさせられて、気がつけば辺りは赤く染まっていた。もう夕方か、と時計を見れば5時半。晩ごはんの材料買いに行かなければ。


「買い物手伝ってくれる人ー」

「食べていっていいんスか!?」

「え、うん。別に食べたくなかったらいいけど」


行くっス!と黄瀬くんがうるさいほど元気に手を挙げたので頼もうとしたのに他のメンバーもぞろぞろと立ち上がって玄関の方に進んで行くので聞いたのに意味はなかったらしい。





* * *





「紅葉ちんお菓子〜」

「おい紅葉、もっと肉入れろ肉」

「辛口で頼むよ」

「ここは甘口ですよ、赤司くん」

「俺は中辛がいいっス!」


やっぱり失敗した。君たちについてきてと頼んだ私がバカだったよ。他人のふりをして後ろのうるさいのを無視して買い物を続けると急に軽くなった左手にバランスを崩しそうになってしまった。


「緑間くん」

「なんだ」

「いやなんだって荷物」

「俺に料理はできない」


だからこんなことでしか手伝えないと言う緑間くんに感激した。みんなにも見習ってほしい。お礼を言っても緑間くんはたいした反応はしなかったが緑間くんはツンデレってわかっているから。きっとここで言ったら否定するだろうけど。


「ありがとう緑間くん」

「……ふん」





* * *





「はい、お待たせー」


目の前にカレーを差し出せばがっつく男子高校生。このペースなら余らないですみそうだ。自分のカレーをよそって空いていた席につく。しかしなんでお誕生日席を空けておくかな。


「紅葉、おかわり」

「はいはい」


なんだかお母さんになった気分だ。そうしたら君たちは息子だね。……うん、嫌だわ。
カツンとお玉が底に当たる音がして中を覗くと銀色のそれ。


「はい、売り切れでーす」

「ええー!?俺おかわりしてないっス!」

「紅葉、お兄さんの分は」

「悠兄は今彼女の家だから平気」

「えっ、じゃあお父さんとお母さんは…」

「あぁ、いないから大丈夫」


途端にみんなの気分が急降下したのがわかる。ごめん、今のは私の言い方が悪かった。


「うち放任主義な家だから」


今の両親はとてつもなく自由な人たちだ。先週届いたエアメールには「スイスなう!」と書かれていたのに母親の腕にはしっかりコアラが抱き抱えられていた。お前ら絶対オーストラリアにいるだろ。せめて間違えるならオーストリアとかにしてほしい。


「紅葉ちんの両親見てみたかったな〜」

「絶対嫌」

















友人団







(残念だな、せっかく紹介しようと思っていたのに)

(あえてつっこまないでおくよ、赤司くん)

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