「急にすみません紅葉さん」
「紅葉っち眼鏡っス…!」
「なかなかいい家なのだよ」
「早く上がらせろ」
「紅葉ちん、お菓子ある?」
「人の家だ、迷惑のかからないようにしろよ」
「なぜいる」
休日の午前10時、地獄を見た気がした。
* * *
「……でどうしてうちに来たの」
中学生といっても180p越えの奴がごろごろいれば部屋がとても狭く感じていまうじゃないか。兄がいなくてとても良かったと思う。
「決まっているだろう?テスト勉強だ」
「なんでうちでする」
あいにく場所がなくてね。いかにも仕方がないといった感じで赤司くんは言うが仕方がない要素なんてものは1つも存在しないと思う。勝手にしてくれるのは構わないがいちいち私を巻き込まないでくれよ。私の有意義な日曜日はもうなくなったのは決定事項らしい。
「さっちゃんは?」
「桃井さんなら用事があるそうです」
さっちゃん裏切ったな。渋々読みかけていた本を開こうとすると思い切り奪いとられた。赤司くんからなにか黒いオーラが出ているがまったく気のせいじゃないらしい。魔王だ、魔王様が君臨しなさった。
「お前も一緒にするんだよ」
「え、嫌「するんだよ」
はい、します。しますよ赤司様。泣きべそをかきながら数学と書かれたノートを開くと頭を撫でられた。複雑。
でも、正直言うと本当に私は勉強しなくていい。だって前世の記憶があるんだもの、記憶力がいい私にとっては朝飯前って奴だ。テストの前日に教科書を見直せばある程度いい点がとれるし、勉強をしないで困ることなんてない。実際君たちより23年も長く生きてるんだよ、私は。
「うー、5乗の計算って面倒くさいっスよねー…」
「え、これだったらパスカルの三角形使えばいいじゃん」
「え?」
項垂れた黄瀬くんのノートの余白に説明の為の文字をつらつらと書き込んでいく。それを使って1つずつ解説すると黄瀬くんはおー!と目を輝かせた。それにつられたのか、他のメンバーも自然と覗き込んでくる。
「貴様…、これはいったいどこでならったのだよ」
「え?だってこれ高校の範囲が頭に入っていればわかるよね?」
「え」
自分の言ったことを頭のなかで復唱してみる。………うわああああしまった。そうだよ、今は私ってば中学生じゃん!高校の範囲って、知ってるわけないじゃん!
「お兄ちゃんに教えてもらったんだよ!だからそんな目で見ないでください赤司くん!!」
「紅葉、次のテスト真面目に受けろ」
「え」
「いいね?」
「……はい」
これお願いじゃなくて誘導尋問ですよね?
誘導勝負
(まぁ、勝つのは僕だが)