※主人公は研磨の双子の妹・小学生時代の話
「研ちゃん…っ」
「……大丈夫だよ、きっと、」
今にも泣き出しそうななまえを抱き寄せる。雨せいなのか、それとも違うものなのか、わからなくなるぐらいにびちょびちょになったそれは昼間の倍以上の重さを持っていた。上を見上げれば気分を降下させるような木の間から覗く雨雲。
「大丈夫、だから」
頬に流れたそれは雨で跡形もなく消え去った。
* * *
そもそもどうして俺たちがこんな状況にあるのかというと、それは二人だけで出掛けようとしたことにある。いつもなまえと二人でしていたゲームがついにクリアしてしまって俺もなまえも手持ちぶさたに。久々に外に足を踏み出したのが原因だった。なれないことはするもんじゃないとだけは今はっきりと言える。なまえの提案で普段学校の登下校では通らないような脇道を探検に出た俺たち。最初は新しいゲームをしたときのような興奮に足は止まらなかった。
「研ちゃん…、ここどこ?」
「え…」
気がつけば見たこともない建物に看板。ただひとつ変わらないとする青空に安心感なんてものはない。それからひたすら走った。連絡手段がない俺たちにとって唯一残された方法。でも、右も左も違う気がして。体力がなくなった暁には空は曇天に変わっていた。
寒くて、冷たい。夏とは思えない体温になまえを強く抱き締めて、大丈夫、大丈夫とひたすら呟く。俺の服を強く握りしめながら震えてる手。ふと、なまえが顔をあげて、なにか呟いた。それを聞き取ろうとした耳に入ってきたのは。
「──…っ研磨、なまえ!」
「クロ…!?」
「クロちゃ…っ!ひっ…く!」
「おー、よしよし。怖かったろ」
離されていく小さな手は変わりにクロの背中へと回された。震えが止まったそれに反響してボロボロと泣きじゃくるなまえの頭を撫でながらクロは大丈夫かと聞いてくる。力なく動かした首はそのまま上がることなく項垂れたままで。
「なんで、」
いつもなまえを安心させるのは俺じゃなくてクロなの。飲み込んだ言葉を出さないように精一杯土を踏みしめた。
心温レインブロー
(少しは俺にも頼ってほしいのに、)
◎夢白さんによる強制イベントでした(^q^)