※流血注意
手をつかんだときに研磨が息を飲むのと同時に少し目を細めたのがわかった。温もりとは違う生暖かさに自然と顔は歪んで、そのまま研磨を見据える。
「……っ、なまえ?」
「研磨、血が出てる」
「え…、本当だ…」
きっと朝練で固くなっていたところがひび割れたんだろう。水道まで引っ張ってきて固まったそれを洗い流してやるとしみるのか、それとも痛いのか、引っ込めようと小さく抵抗するひらを強めに握りしめた。諦めたのか、ぶら下がっただけの腕の先端をシャツの袖で一本一本丁寧に水滴を吸着させる。柔らかくなった傷口から紅いそれが滴ってきたので舌を這わせると力がこもったのがわかった。苦いような、なのにどこか甘いような、不思議な味覚が口いっぱいに広がっていく。
「な、にしてるの、」
「血が垂れてきたから」
「だからって、舐めなくても…」
研磨が眉を下げてしまったので一言謝罪してからポケットに入っていた絆創膏を取り出す。貼っている途中で浮かんできた疑問。
「ねぇ、研磨」
「なに」
「なんで絆創膏って『絆を創る』って書くんだろう」
「…知らない」
小指のそれを撫でながら解釈していく頭はやっぱりいいようにできているらしい。
「私がさ、研磨に絆創膏を貼ったってことは絆ができたのかな」
「…どういうこと?」
「こんな真っ赤な絆ができてると思わない?まるで赤い糸みたいな、さ」
目だけあげるようにして研磨を見ると絆創膏に刻まれた紅に負けないぐらい頬と耳は紅葉していた。
「…赤いね、」
「…なまえがせいだよ」
「うん、ごめんね」
あんまり見ないで、と指先しか出ていない片腕で顔を覆っていった。反対の絆創膏がついている小指を自分のそれと絡ませる。目元が見えないからわからないけどきっとさらに頬は赤くなっているだろう。
「研磨は私との赤い絆を創るのは、嫌?」
「……別に」
「うん」
「なまえなら、嫌じゃない」
真っ赤な膏
(絆を創って膏のように取れなくして)