「───…で、こっちが…」


中3の冬、俺は海常高校にいた。もちろんそれは学校見学で。推薦を受けている俺のためだけに開かれたもの。別にこれと言って、特別海常に入りたいかと聞かれれば答えはノー。推薦で入れるし全国の常連、理由はそんなもんだ。
あいつに勝ちたい、バスケに対する正直な考え。帝光中学の絶対理念、『勝利』はしっかりとたった2年ばかりで身についたようだった。


「あとは、部活のことなんだが…」


案内をしていた教師は、この後職員会議なんだよと苦く笑った。別に1人で行けますと言おうとした矢先、その教師は前を通り過ぎようとした人に声をかけてしまった。小日向と呼ばれた人を見ると、まずい女の人だ。いつもの如く黄瀬涼太だと黄色い声を飛ばされてしまう。
じっと俺の顔を見つめた小日向さんはどうしてか、なにも言うわけでもなく教師との話に戻った。疑問が頭を巡る。今までこんなことがあっただろうか?


「じゃあ行きましょうか」


軽く返事をして小日向さんのあとに続いて歩き出す。会話は、ない。
もしかして、芸能系に興味がないとか?それだったら俺のことを知らなくてもおかしくないが、それはそれで気に入らない気がする。

「あの」

「?なんですか?」

「なにも言わないんスか?」


他の奴だったらどんな勘違い野郎だと思われるだろうが、俺の場合は別だ。すると小日向さんは黄瀬さんのことは知ってますよとさっきと変わらない態度で言った。なら、なんで。思った通りの疑問をぶつけると顔だけこちらに向けていたのを止めてまっすぐ俺の方を見た。


「だって、騒がれるの嫌なんじゃないですか?」


間違っていたらごめんなさいと小さくお辞儀をして変わらない様子で歩き出した。




















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(………変な人)






◎続きます




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