冬が来て、様々なことがあった。冬は嫌いだったが、小日向と一緒にいることが出来るようになったので感謝する。小日向といる幸せって奴が実感できるようになった。同時に、やっぱり好きなんだなぁと改めて思う。まさか俺がこんなに誰かを好きになる日がくるなんて、自嘲気味に苦笑いすると小日向はへにゃりと緊張感のない笑顔を見せた。


「笠松くん、眉間にシワよってますよ」

「お前こそ顔が緩んでるぞ」

「だって笠松くんと一緒に帰れるのが嬉しくて」


不意打ちはずるいと思う。この間まで恥ずかしいだのなんだの言ってたのは誰だよ。小日向の頭を乱暴に撫でると、やっぱり俺の顔も緩んでいた。
ふと、小日向が足を止める。つられて俺の動きも止まった。なんだよ、小日向はじっと黙って空を見上げるので何があるのか見ようとすれば鼻先に触れる冷たい感覚。


「雪…!雪ですよ、笠松くん!」


小日向はまるで子供のようにはしゃぐ。例年より少し早い初雪。ニュースではなにも言ってなかったのに。
周りの音を集めるそれは小日向にとても似合っていた。雪のように止むことを知らない俺のなかにあるこれは日に日に大きくなっていく。そんなことも知らないような無邪気な顔で小日向は俺に笑いかける。


「私、雪が好きな理由が1つ増えたんですよ」

「へぇ…、なんでだ?」


小日向はゆっくりゆっくり俺に近づいてきて手を握った。目があって心臓がうるさくなる。


「わかりません?」

「わかんねぇから聞いてんだろ」


ですよねぇ。ぱっと離した手を後ろで組むととても嬉しそうに言う。


「『幸男くん』」

「は」


今、こいつ俺のこと名前で呼んだ、よな。確かに呼んだ。嬉しさのあまり顔に集中する熱をごまかすために目をそらし、疑問符を浮かべる。


「字は違いますけど…、『ゆき』って入ってるじゃないですか?私、幸男くんのことが好きなんですごくうれしいです」

「……ッ…!」


耳のなかで反響するソプラノに驚きつつも笑みが溢れる。いちいち嬉しくなるようなことを言うなよ。再び小日向の横に並ぶと2人だけに聞こえるような小さな声で呟く。


「………葵」

「……なんですか、幸男くん?」

「…何でもねぇよ、葵」

「幸男くん」

「葵」


自然と繋がれた手に温もりを感じて小日向を見るとやっぱり、笑っていた。























きみのかさを知る










(この温かさはずっと君だけのものだから)






【Fin】





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