まだ春も淡い中、烏野高校バレー部の練習は行われていた。いつも通り、そのはずだった。


「あの、すみません」

「!?」


田中に声をかけた少女によってそれは違うものになった。自分より若干大人びて見える、美しいの名がつく少女に田中は同様を隠せずに思わず菅原に求めた助け船。一瞬同じような動揺を見せた彼は入り口に近づくと同時に少女を観察。私服であろう春を表す色の服を身に包み、明るい茶色の毛先は緩く跳ねている。それにどこか同じものを見た気がしたが、それよりも今は目の前の問題を片付ける方が優先順位は高かった。


「あの、誰かに用ですか?」

「あっ、菅原さん!」

「えっ」


誰だろうと模索しても思い付くあてのない彼女に菅原の頭はさらに混乱した。なんで、あったこともない彼女は自分の名前をしっているのか。それとも実は知り合いだったりするのか。
その謎を解き明かしたのは。


「どうしたの!?」

「翔!今日一日練習って張り切ってたのにお弁当忘れていったでしょ?」

「本当だ!ありがとう!」


ついこの間できたばかりの後輩の一人だった。どよめきを隠せない一同に二人の会話は展開していく一方で。近寄ってきた澤村が代表して疑問を口にした。


「挨拶が遅れてすみません。私、翔の姉でなまえと言います。いつも弟がお世話になっています」


弟、と小さく漏らした口のまま盛大に発せられた叫びは体育館中に鳴り響いた。





世話焼きなお姉様!





(まっ、まじで日向のお姉様!?)

(はい。皆さんのことはいつも家で翔から聞いています)

(あぁ、だから…)

(なまえ姉、そのくらいでいいから!)

(ちょっとぐらいいいじゃない!お姉ちゃん寂しい!)

(((なんか微笑ましい…)))
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