雨続きの日が連なって、さすがの私でも傘を持ち歩くようになってきた。日が長くなったはずの空は雲に隠れて、着実に夜に近づいてきている。
昼間のせいなのか、なんだかもやもやして部活には集中できなくて。ついにはボールをおでこに当ててしまった。ヒリヒリと熱を帯びたそれは赤く恥ずかしいものとなってしまった。これも全部あいつが、


「クロさーん!」

「山本、うるせぇ」

「っ!」


うわさをすればなんとやら、タイミングよくあいつが、黒尾が体育館から出てきた。見られてもないのに動きは勝手に止まって、唯一動いた目は自然と地面へ落ちる。心臓がうるさくて、早い。
…なんてことはない。ただ、足を前へ前へ動かせばいいだけじゃない。先を睨み付けるように顔を戻せばそこには。


「え…?」


一本の傘のなかにいる黒尾。と、金色が少し落ちてきてプリンヘッドになっているボブカットより少し短い、女の子。笑いながら髪を撫でる黒尾の反面、女の子の顔は見えない。嫌がってるのは素振りだけで、きっと。ずぐりと騒ぎ立てる胸元を傘を持つ反対の手で押さえつける。


「岡崎」

「っ、黒尾…っ」

「でこどうしたんだよ。赤くなってるぞ」


傘を彼女に預けてこちらに走ってくる。さっきと同じ笑みをした黒尾の人差し指が届いた。さっきとは違う心臓の動きに視界が歪んで。違う、これは雨だ。お願いだから、止んで。


「岡崎?」

「っ!ごめん…っ!」


腕を押し退けるように駆け出すそうとしたが、もう一度呼ばれた名前のせいで弛んだ足を黒尾は見逃さなかった。捕まれた手首が熱を帯びる。振り払おうとした衝撃で真新しい傘が泥に揺れた。でもそれが見えないくらいにぐちゃぐちゃで。


「ごめっ…。大丈夫…、大丈夫だから!」

「お前…っ!?」

「お願い…っ、気にしないで…」


黒尾の言葉がわからないように自分のそれで押さえつけて傘もそのままに走り出した。跡形もわからなくなるぐらい走った足は止まらない。
あぁそうか、やっとわかった。





揺れる傘揺れる恋心





(私、黒尾のことが──…)



好きなんだ、




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