「んー…」
同じクラスになって早一週間たつが田島が悩んでいるのを初めて見た。一日の半分の終わり知らせるを昼休みがあと5分で始まろうとしているが変わる様子は全くない。まぁ、俺には関係ないし悩むだけで終わってくれればいいのだが。
四時間目の終わりを告げるチャイムに机の上を片付け弁当箱を取り出すといつも通り田島と三橋も同じように弁当箱を俺の机の上で広げ始めた。箸を持ち手を合わせると眩しい視界に写った青と白。
「…お、飛行機雲」
「!」
明日は雨かなんて考えていると、端に入った田島が揺れた。それに反応した三橋が掴んだエビフライは弁当箱に逆戻り。落とさなくてよかったなと伝えると、ぎこちなく返事をする三橋。飯を続けようとしたその腕はなぜか上に。急なことに驚いて顔を上げるとそれはやっぱり田島で。
「三橋!行くぞ!」
「っ!?」
「あっ!」
無理矢理三橋の腕を引いて扉を飛び出して行った田島を反射的に捕らえようとした手は空を切る。その手で空腹が止まない腹を押さえ、俺もあとを追った。
* * *
「あっ!『淕』!」
「!?」
「…なんでいきなり呼び捨て」
田島の背中を追って来てみれば、栄口の幼馴染みで阿部の同中だというあの女。方向転換したその目に写る俺たち。どこかオーラがあってどこか不機嫌そうだ。俺と三橋が冷や汗を流すさながら、田島は気にせずに嬉しそうな笑顔を絶やさない。
「なぁなぁ!」
「なに」
「マネージャーやってくれよ!」
「はぁ!?」
何を言っているんだこいつは。理解するまでの数秒の間、俺はただ田島の発言が空耳であることを信じるしかなかった。