空に広がる白い一本線。そこから垂直に頭を垂らすと写ったそれに視線は止まる。胸元まである粟色の髪から覗く白い肌、澄んだ瞳。同じはずなのにどこか違う雰囲気に目は奪われた。
パシャリ。空に向かって伸びた腕はそれを捉える。ただひたすらに、無邪気な子供のような少しだけ緩んだ口元に試合の時とは違う興奮を感じた。
「───田島ァ!行くぞ!」
「!、今行く!」
どうしようもないそれを抑えて土を踏みしめる。
* * *
朝のホームルームが始まる前のプール下部室の一角、朝練を終え教室に向かう準備をしていた。いつも通り着替えを終え出る準備をしていると、部屋中に響き渡ったノックの音。扉に一番近い場所にいた俺がが全員の格好を確認し、軽く返事をすると控えめに開いた扉に目を瞬かせた。
「あの勇人っていますか、」
予想外の人物に、というか見たこともないような少女にの動きは停止する。もう一度目の前にいる少女が声をかけると我に帰りええと、声を漏らした。少女が言った勇人という名前に頭を捻らせて否定を言葉にしようとした瞬間。
「淕!どうしたの?」
「あ、勇人。弁当忘れてた」
「えっ、教室でよかったのに」
「教室行くよりこっちよった方が早いと思って」
「そっか。ありがとう」
勇人と呼ばれた人物に視線を移すと間を割って出てきた栄口が驚いた顔をして少女のもとに駆け寄った。勇人とは栄口のことだったのかと動揺を隠せない。すると脇からもうひとつの影。
「おう、淕」
「あれ、タカも野球部だっけ」
「てめ、ワザと言ってんだろ」
「あはは、バレた?」
なぜか阿部もそのなかに加わり疑問符を浮かべる俺たちをよそに淕と呼ばれた少女は用事が終わったのか失礼しました、と小さく礼をして出ていった。扉が閉じられた瞬間、二人に詰め寄ると栄口は困ったような、阿部は呆れたようなため息と一緒に漏らした言葉は。
「淕は幼馴染みだよ」
「中学が同じなんだよ」
期待が外れたかのように肩を落とした仲間たちを見て俺は苦笑いするしかできなかった。