14.06.25 ベッドの下(結衣×尊)







────「そこで、連れ出した友達に急に何なのか、て訊いたら、ベッドの下に包丁を持った男がいた、と…………」

月人さんの言葉を遮るように叫んだのは尊さんだった。尊さんは顔面蒼白、という言葉がしっくりとくる程に顔を青ざめさせて叫んでいる。

「タケタケ、声が大きい。大きいよ。ツキツキの声が最後まで聞こえなかったじゃないか」

それにアポロンさんが不満そうな声を上げた。

「あ……いや、悪ぃ」

尊さんはそれに罰が悪そうに頭を掻く。

誰が言い出したのか、皆で怪談話をしよう、ということになったのだ。場所は、生徒会室。

お誂え向きにロキさんとバルドルさんが蝋燭まで用意して、薄暗い部屋の中で始まった。

一人一つずつ、と話をしていって、最後が月人さんだった。

怪談話といえば間違いはないのだが、月人さん以外の皆さんは幽霊に纏わる話をしてきたので、最後の最後で何か違う気がしてしまった。

アポロンさんやロキさん、バルドルさん、ディオニュソスさんは語り方が上手く、鳥肌が立つ思いをしたし、ハデスさんとトールさんは淡々と喋る様と口調が恐怖を煽った。

月人さんの話が怖くないものだというわけではないが、メジャーな話なのと、ここまで散々幽霊話が続いたせいか、何故かオチのように感じてしまった。

しかし、どうやら尊さんだけは違ったようだ。

今までの幽霊話には微塵も怖がる様子を見せなかったのに、月人さんの話にだけは異様に怯えてみせた。

「じゃあ、皆が話終わったところで解散だね、解散。もう就寝時間だよ」

怖がる尊さんを置いて、皆さんが生徒会室を片付け始めた。


────「おい、雑草」

生徒会室を出るとき、不意に尊さんに声を掛けられた。

「はい、何でしょうか」
「……ちょっと、頼みてぇことがあんだけど」

尊さんはきまりが悪そうにもごもごと言った。

頼みがある、と連れていかれたのは日本で神話の二人が浸かっている部屋だった。

「頼みたいこととは?」

私が尋ねると、尊さんは、そこにいろ、とだけ言った。そして、恐る恐るといった様子で自身のベッドへと近付いていく。

その姿を見て、私は直ぐに察した。

「あの、宜しければ私が誰もいないか確認しましょうか?」

本来なら月人さんに頼みたいところなのだろうが、月人さんは日課である月を眺める、ということの為に此所にはいないのだろう。

「女にそんな危ないことさせられるか」

尊さんはさも当たり前かのように言うが、ベッドの下に誰がいる確率なんて恐ろしく低い。……というか、ほぼない。

けれど、尊さんの優しさに私はくすりと笑った。

尊さんは怖がりながらも近付き、少し遠目にベッドの下を確認している。そして直ぐに、安堵の息を漏らした。

「悪かったな。戻っていいぞ」

尊さんに言われ、私は何を言うでもなく、はい、とだけ返事をした。そんなことに怖がる尊さんが可愛く思えたのは、ひみつにしておこうと思いながら────。



「ではそれで、草薙結衣の部屋に変な男がいたらどうするつもりだったのですか? 戸塚尊」
「……そこまで考えてなかった」

次の日、その話をすると、月人さんが無表情のままそう言った。












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