曝け出された性器をゆっくりと森山の手が擦り上げ、鳩尾から湧き上がる快感の波にぎゅっと目を瞑る。

「ん、ふぅ…ぁ、はっ…」

下から上へ余すところなく他人の手で撫でられる感覚にわけもなく泣きたくなる。
眉を寄せ、快感に耐えていると眉間に森山からの優しいキスが降ってきた。

その温かさに深く息を吐くと、森山の手がするりと下へと降りていく。
尾てい骨を撫でられ、不穏な予感に襲われた伊月は身を捩って逃げを打った。
しかし、力の抜けた身体ではほとんど無意味な抵抗となり、森山の腕の中へと引き戻され、焦りが募る。

「待っ…もりや、まさ…!」

「ごめんね、伊月くん」

森山は伊月の身体をうつ伏せに横たえると、トロリとしたものを尻の狭間に流していく。

「ひ…っ、なに!?」

「ん、ローションだよ。君を傷付けないと言ったしやっぱり慣らさないとね」

くちゅりと猥雑な音を響かせながら、ぬるりと滑った指先が後孔を探り、怯えて窄まるのを宥めるように優しく撫でた。

「や…っ、ん、っ、」

「力抜いて、」

何とも言えない感覚に身を竦ませると、耳元へ低い囁きが落ちる。
その声に促されるようにして、呼吸を深くすると、縁を辿っていた森山の指がくっとめり込んでくる。

「ひ…っ、ぅ、っ…」

森山の指が探ってる場所がどこかなんて考えることが出来なくなって、強く目を閉じる。
しかし視界が遮断されたことによって、より森山の指の形がはっきりと伝わるはめになり、伊月は涙を溢れされた。
異物感に驚く身体を押さえつけられ、長い指がゆるゆると奥へと進んでいく。

身体の内側を探られる初めての感覚は、酷い不快感だった。
傷つけないようにと慎重な動きをする森山の指が、普段自分の頭を優しく撫でてくれる手だと思うと、なんとも言えない感情に襲われた。

「大丈夫?辛くない?」

森山の声が遠く聞こえる。
答えられない言葉の代わりに森山の腕を掴み、こくりと頷くと、中を探っていた指が不意に抜かれた。

「…っ、あ、」

「伊月くん、ごめん」

「……っあっ!っ…く、」

身体の奥を突かれる痛みに眩暈がした。
身の内て感じる他人の脈動に困惑する。

「いっ…っ、はっ、あっ…」

ゆっくりと体内にはいってくる森山のものは、焼けるほどに熱く、奥のほうから奇妙な熱が湧き上がった。

「…っ、」

歪んだ視線の先、苦しそうに眉根を寄せる森山の姿が映った。
目が合うと、中のものがゆっくりと抜き出される。
咄嗟に引き寄せようとする森山の腕に縋り付いた。

「……っ、」

息を呑む気配に構わず頬を寄せ、掠れる声を漏らしながら、浅い息をついた。

「っ、はっ、…ん、」

腕を伸ばして、のしかかる肩に届かせる。
姿勢が変わったことで繋がった部分への圧迫が増し、思わず下腹部へ力を入れてしまう。

「んぅ……っ、ふぁ…」

「……っく、」

耳元で同じように息を詰めた気配がし、中に埋められた性器の質量が増した。
ぐっと強く腰を入れられ、内部を擦られる感覚に慄き、ますます森山に縋りつく。
ぎゅうぎゅうと内壁を締め付ける伊月の背中を森山が優しく撫でた。
その感触に力が抜けたところを狙い、ずるりと抜けた森山の性器が間髪入れずに突き上げた。

「ひ…ぃあ…!ああ…っ、」

思わず上がった甲高い嬌声が自分のものとは思えず、いやらしく耳にこびりついて離れない。
声を漏らさないようにと口を閉じる前に、強く揺さぶられて視界がぶれた。

「や…ぁっ、あああっ、ん、まっ、て…ひっ、!」

両足を森山の肩へと担ぎ上げられて、腰の位置が変わり、詰めた息を吐き出すタイミングで最奥まで飲み込まされる。

痛みは熱へと変わり、萎えかけていた伊月の性器も再び勃ち上がりはじめた。

「はっ、ん……っ、くっ、ぁあっ!」

突き上げられるたびに心と身体がバラバラになる。
ぐちゃぐちゃになった頭の中で思ったのは、森山が間違いなく男だということだった。
当たり前のことなのに、伊月は本当の意味でそれを分かっていなかったのだ。
男同士、鍛えられた身体を触れ合わせ、森山が伊月の身体を自由にする。
男であるはずの自分が、女のように組み敷かれる。
理解していたはずのそれは思っていたよりも衝撃的だった。

「んっ、はっ……っ、あっ、」

奥を突かれながら、性器を擦られ快感を得る。
後孔を犯されながら女のように喘いでいる自分が酷く恐ろしくなった。

「あっ…っん、ああっ、っ、んぅ、」

ラストスパートのように森山の動きが速くなる。
伊月もまたそれに応えるように一際大きく喘いだ。

「ああっ、んっ、はっ、…ああああっ、」

溶けてしまうような快楽に押し上げられ、伊月は達した。
身体の奥にじんわりと熱が広がるのを感じ、森山射精したのだと知る。

すべてが終わると森山は長い間伊月を抱き締めたままでいた。

「伊月くん、大丈夫?」

「…、はい」

「ごめん。もっと優しくしてあげたかったのに」

「いえ…」

目を伏せて森山が言う。
伊月は息を吸うと小さく言葉を吐いた。

「伊月くんが好きなんだ。好きだ。本当に好きなんだ。」

伊月を抱き締める森山の腕の力が強くなる。
痛いほど抱き締められた伊月は目を伏せた。

「わかってますよ、」

伊月は冷静な声を出しながらも、心の中では動揺していた。
羞恥、苦痛、それまで知らなかった何か。
自分が森山によって別のものになってしまった感覚が、伊月にはひどく恐ろしかった。
隣で眠ってしまった森山があまりにも幸せそうだったので言いそびれたが、伊月は性行為を好きにはなれなかった。





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