ずらりと並んだ提灯と、活気溢れる屋台。
神社の境内には、大勢の人々が賑わっていた。


「えっちぜーん!たこ焼きあるで!」

紺色の浴衣を身に纏う謙也が大きく手を振る。
"たこ焼き"とかかれた屋台の前でそわそわと待ち構えてる。

「はよ、来いや越前!」

痺れを切らしたように大声で叫ぶ謙也にため息を吐きつつリョーマは一歩一歩近付いた。

「ったく。年上のくせしてガキなんだから…」

同じく紺色の浴衣に身を包んだリョーマは人混みをかきわけながら謙也の元へ来るときゅっと、謙也の浴衣の裾を掴んだ。

「謙也さんさ、はぐれたらどうするつもりなの?こっちに慣れてるわけじゃないんだから
少しおとなしくしてなよ」

渋い顔でそうたしなめると
謙也は頬を膨らませ不機嫌な顔になり、そっぽを向いた。


今日は夏休みとお互いのオフが重なり
リョーマが謙也を東京のお祭りに来い、と誘って出来た久々の2人きりの時間だ。
はるばる大阪からやってきたひとつ年上の恋人は屋台を見た途端にはしゃぎだし、あっちこっち走り回りながらリョーマを振り回した。

「せやかて、越前とお祭り楽しみやってん…。」

ぷくりと膨らませた頬は少し赤みを帯びて
リョーマはごくりと息を飲んだ。


走り回ったせいか、謙也の浴衣は少し乱れ
薄い鎖骨が裾から覗いている。

「ほんっと、謙也さんって…」

はぁっとため息をつくと謙也がちらりと視線を向けた。

「な、なんや…っ!」

謙也は戸惑いの表情で首をかしげた。
その様子にリョーマはまたひとつため息を吐いた。

「ねぇ、もうすぐ花火が上がるんだけど、とっておきの場所があるんだよね」

「花火!?花火が上がるんか?楽しみやなー!」

リョーマは謙也の手を掴むとツカツカと歩き始めた。

「えっ、越前!?ててて手っ、!」

慌てた様子で振りほどこうとする手をさらに強い力で握る。

「こんなに人がいるんだから誰も見てないよ」

リョーマはさらりと言うと再び歩き始める。
心がもぞもぞとくすぐったいような感覚に謙也は頬を赤く染めた。


人混みをかきわけ、階段を登り少し歩くと神社の境内が見えてくる。
先ほどまで賑わっていた人々は神社の周りには人1人おらずしんっと静まり返っていた。

「こっからだとよく花火が見えるんだって」

リョーマは境内に腰かけるとグググッと伸びをした。
その隣に謙也も座る。

「なぁ、越前?」

謙也はゆっくりとした動作でリョーマを見つめるとふわりと微笑みかけた。

「今日はほんま楽しかったわ。ありがとな」

「俺も楽しかったよ」

そう言うと、リョーマは目を細め、ゆるく口角を上げる。
ゆっくりとリョーマの顔が近づき、唇を重ねられる。

「んっ…っ、」

啄むように口づけられたかと思うと
開いた唇の間から舌が忍びこみ、舌の表面を擦り合わすように動かされる。

「んっ、あっ、…はぁ、っあ、」

息を整えようと一旦、唇から離れると
後頭部を抑えられ、さらに深く舌を絡めとられた。

「んあっ、ま、っ…えち、ぜ…んぅ…、」

リョーマは謙也の腰に腕を回すと抱き寄せる。
乱れた裾の間から覗く鎖骨に軽く噛み付く。

「んあっ!…あ、はぁ、」

そのまま優しく舐めると甘い吐息が謙也の口から漏れる。







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