「ねぇ、室ちん。ソレ、いつまで付けてんの?」


紫原は氷室の首で光るネックレスを弄りながら
持ち主、氷室に問いかけた。

「これはタイガとの思い出だからな」

懐かしそうに、愛おしそうにシルバーリングを眺める氷室に
紫原は眉をひそめた。

「あいつと兄弟やめたいんじゃないの?」

あからさまな紫原の不機嫌な声に氷室はクスリと笑った。

「そんなに俺がこれを付けてるのが嫌なのか?」

氷室がニコリと笑って問いかけると
紫原がさらに不機嫌になるのがわかった。

「別に〜。」

ふいと背けた横顔は言葉とは裏腹に
納得のいかない、という顔をしていた。

「これは俺にとっても大事なものだからな」

アメリカに居たときから
欠かさず身につけていたリング。
火神を突き放した今でも、それは氷室の首元で輝いていた。

「もしあいつがバスケやってなかったらどうするのさ」
「アイツはバスケを辞めないよ。絶対に。」

不機嫌な声のまま聞くと今までとはまるで違う真剣な声が返ってきた。

「………」


なにもかもが気に入らない。
火神とかいう奴も、
そいつとお揃いのリングを大事そうに持ってる氷室も
なにもかもが気に入らない。


紫原は氷室の腕を強引に掴むと床に押し倒した。

「アツシ?」

突然のことにも氷室は冷静でさらに紫原の不機嫌さを煽った。

「なんかめちゃくちゃムカつくから
今日は室ちんのことぐちゃぐちゃに壊したい」

獰猛さを含んだ眼でそう言うと
氷室は少し目を見開いてからふわりと笑った。

「なんだ。アツシはヤキモチ妬いてたのか。」

クスクスと笑うように言うと
紫原の纏う空気が変わった。

「室ちん余裕だね。
そんな余裕いつまで持つのかな」

強引に氷室の口を自身の唇で塞ぐ。
荒々しく口腔を貪れば氷室から熱い吐息が漏れた。

「はぁ、ん…いいよ。アツシになら壊されても」

潤んだ瞳で紫原を見つめると、彼が息をのんだのがわかった。

「室ちんマゾなの?」

紫原が問いかけると妖しげな笑顔が返ってくるだけだった。





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