マニキュアを買った。指先が、赤色に妖しく光ってる。買い物に付き合ってくれたヒカリちゃんには、赤は奇抜すぎておすすめしないと言われたのだけど。
(私の、特別な色なんだもん!)
ドキドキしながら、目の前にいるレッドさんの反応を待つ。ぴくっと眉を寄せて、3秒。5秒。10秒。過ぎていく時間に比例して、不安が肥大化する。
や、やっぱだめだったのかな!
「ああ、おしゃれか」
「は、い?」
「爪から大量出血してるかと思った」
「……」
「びっくりした」
「……えええ」
ジョークなんですか天然なんですかこの人は。もう、もう!
女の子のおしゃれに疎いのは知ってたけれど、程度ってものが、
「俺の色だね」
レッドさんは曖昧に微笑んで、私の手をとると、そっと赤色に唇をよせた。案の定、思考回路は停止する。ほおがあつい。さらっと紳士してみせるんだから、私はいつだってこの人にかなわない。
「レ、レッドさん」
「うん」
「お願いがあります」
「なあに」
「足にも、ええと……あの……」
「うん、塗ってあげる」
あなたのいろ
なんて甘ったるい色なんだろうもっともっと染めあげてほしいの、とっておきのあなた色に。
「あ、はみでた」
「またですか」