コトネが歌っている。るりらるりら、むねに雪崩込む音が、はじけて消えていく。なんのうたかと聞けば、昔すきだった子守唄だと笑ってみせた。得意のふにゃふにゃした笑顔で。
そして彼女はまたさえずる。時折、思い出したみたいに僕の髪を撫でながら。
(なんだか、眠たい)
コトネが僕に勝利して一週間を超えた。それなのに、コトネはそれまでと変わらずにシロガネ山を訪ねる。僕の貧相な城で今日もふにゃふにゃ笑うんだ。
「レッドさん眠たそう」
「うん、ねむい」
おやすみなさい。
歌声と歌声のすきまにそんな言葉をきいた。うん、おやすみ。まぶたがゆっくりと下りていく。
sommeil
ぐんない、ぐんない。
君のおかげで、ようやく僕は眠れるんだよ。