壊れ物を扱うみたいにそっと丁寧に抱きしめられたものだから、そんなにやわじゃないよと言いかけてそのまま言葉を飲み下す。彼は人の求め方も知らないまま大人になった子供だったことに気づいたのだ。私の窮屈な肩にうずめた顔の表情は何となく察しがついた。

「大丈夫だよ」
「……何が?」
「これから私が、世界を全部あげるから」

あの日踏み締めた小さな小箱みたいな部屋は、あなたの世界そのものだった。様々な単色が連なった、大層カラフルな景色はどんどんモノクロに歪んでいった。

その時、私は誓いをたてたのだ。不安定で歪な空間の中で、私は揺るぎようのない誓いをたてたのだ。

「だからいこ、N」



悲劇なんてあげないよ




私は貴方たった一人の英雄になりたいのです。


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