きつく抱きしめられ、困惑したまま行き場のない手を彼の背中にまわしてみた。よく知る温もりが手の平に零れ、その場にそぐわない安堵感を覚える。頭上から零れる白は、ひたすら私達ふたりを霞みがけていく。肌を刺す冷たさが、柔らかい熱に熔かされていく。


「俺のものになってよコトネ」

珍しいことに、その声はほんの少し震えていた。肩にうずめた頭を、ぎこちない手つきで撫でる。


恋だか憧れだか自分自身把握してないけれど、この際もう関係ないのかもしれない。
どうしてそんな不安げに顔を歪めるのか。私が貴方をどれだけ慕い続けてきたのか、きっとこの人は知らない。私の総ての原動力が貴方なのだと知るよしもないでしょう。



(俺のものに、だなんて)

何か勘違いしてる、



臆病な独占欲




この場所にて出会うとっくの前から、私は貴方しか見えないのに。


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