五月の風とオレンジの光に包まれて、私たちは目を細めた。

「帰ってきたって感じ」
「だな」

様々な地域を旅してまわったわけだけど、やっぱり故郷の居心地の良さに勝る場所なんてなかった。だから、念願の帰省を遂げた今、これまでにないくらい心が凪いでいる。


昔みたいに緑の上に寝転び手をつないで、他愛ないお喋りを繰り返した。これまでの旅の軌跡。

私はチャンピオンという仰々しい称号を与えられた。隣の幼なじみも、背丈も伸び変声期を終え、精神的にもかなり成長したと思う。
それから、ふたりの関係性はちょっぴり甘ったるいものになった。

「全部ね、」
「ん?」
「全部変わっちゃったかと思ったんだ。それが嬉しくて、でもなんだか凄く寂しいの」


体、心、ふたりのあり方。いろいろな物事が形を変えて、時には色を変えて、足元に散らばってゆくのだ。


(あーあ!)

空気を肺いっぱいにとどめ、時間をかけて吐き出した。しあわせの味がする。(人類を取り巻く気体はこんなにも甘かったかしら)

数多くの変化に葛藤していた自分が馬鹿みたい。変わりゆくのは当然で、変わらないものだってちゃんとここにある。ふるさと然りこの手の中の温もり然り。


隣の幼なじみは、つないだ手を一層強く握り、明るく声を張り上げた。


「寂しいわけないだろ。なんせこの俺がいてやるんだから!」


横で君がにかりと笑うと、可愛いえくぼが形作られる。ふわり、昔の面影が重なった。



故郷



(変わらないもの、こんなところにもあったのね。)


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