幸せになりたいんです。口うるさいママと優しいパパと頼もしいポケモンと甘いお菓子と安らかに眠れるベッド。私のこれまでの幸せは基本的にこれらの要素から成り立っていた訳ですけど、あなたに恋してしまった以上、ここにあなたが追加されなければいけません。もう一度言います幸せになりたいんです。だから一緒に生きて下さい。ばいコトネ!

*

「読みましたか!」
「いや読みましたけど」
「じゃあいきましょっか」
「どこへ」
「私の家」
「私に拒否権は、」
「ないです!」

にっこり(一見)清らかな笑顔を決めて、コトネは私の手をとった。どうやらフタバに強制連行されるらしい。

つくづく思う。あんな手紙、受け取るんじゃなかった。もしくは受け取った時点で破り捨ててしまえばよかった。あんなのある種の脅迫文だ。そしてこの状況はある種の拉致だ。

「コトネさん、私は」
「まあまあ。ちょうどいいじゃないですか。ロケット団もお気の毒なことに壊滅しちゃったし、行くあてないんでしょ?」

壊滅させたのはどこのどいつだ。なんて言葉が喉まで出かかったが、どうにも気力がわかなくてそのまま飲み込んだ。彼女が言っていることは事実だ。野垂れ死んでやろうかと思っていたところに、彼女はひょっこり一枚の手紙(いわゆるラヴレター。なんて古風な。)を携えてやって来たのだ。


「大丈夫ですってー。ランスさんは私が幸せにしますから!私もそれで幸せになるんだから一石二鳥です」

なんだこれ逆プロポーズ? なんて頭の隅っこで考えながら、気づけば彼女の手持ちであるピジョットに跨がっていた。盛大についたため息は、諦めを意味していたのかもしれない。(かなり認めたくないけれど)



愛ある拉致



こうなったら、意地でも幸せになんてなってやるものか!



- ナノ -