かれこれ1時間、私は痛む頭を抱えている。


「ランスさん、すきですだいすきです!」

何度足蹴にしたって、コトネはめげずに詰め寄った。お互いのポジションを自覚しているとは思えない。一向に鳴りやまないすきですコールをとめるため、とりあえず私は少女の口を掌で塞いだ。

「いいですかよく聞きなさい」
「はひ」
「私はロケット団幹部です、悪の組織を仕切る立場です。あなたは、それを倒さんとしている正義のトレーナーでしょう」

塞いでいた口を解放するや否や、そうですね!と満面の笑顔を炸裂させた。あ、眩暈。


「恋愛に善悪は関係ありませんよランスさん」


あ、ついでに歳の差も!そう付け足しながら、コトネは不意をついて私の腰に抱き着いた。じんわりと広がる幼い体温に、ため息がこぼれる。と同時に気づいたことは、私はこの細い身体を引きはがせそうにないということであって。(それは、私のどこかで枷が外れた、充分すぎる証拠だった)



甘ったるい禁忌




その真っ直ぐな瞳に惹かれていたのは私の方だ、
(なんて絶対に教えてはやらない)



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