こんな私だって、恋に憧れてた。背景にたっぷり薔薇を背負ったような人が現れるって、小さな私は信じて疑わなかった。その人は当然のように私を愛してくれて、私は当然のようにその人を愛してる。

優しくていつも笑顔で、私にありったけの愛と贈り物を与えてくれる。遊園地に映画館にショッピング、いろんな場所を浮かれてデートする。それが幸せな恋人達の正しい在り方なのだと、



「だから今、不思議でたまりません」
「なんで?」
「だって、私の恋人さんは常に無表情で無口で贈り物も滅多にくれません。デートどころか、雪山にこもっているから私はそこへ通いつめるばかり」


レッドさんの顔が、どんどん面白くなさそうに歪んでいく。なんだかあまりに愛らしくて、それだけで私は満たされてしまう。


「こんなにも理想と真逆の恋愛をしていて、理想以上に幸せなんです」

ね、不思議でしょ。
そう言ってぴたり寄り添うと、隣で小さく微笑むあなたを感じた。



ガーリィ幸福論



理想郷には程遠い山頂にて、私たちは愛をつまびく。


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