痛い痛い。私が泣くと、決まってその人は喜んだ。皮膚を裂いて痣を残して髪を切って。そのたび、彼は楽しそうに喉の奥をくつくつ鳴らした。じんわり目頭が湿っていく。埃のかぶった小箱みたいなこの部屋で、わたしはいつしか囚人になってた。
「大層無様ですね」
「、ランス、さ」
「……おや、もうこんな時間ですか。私は仕事に戻ります」
ああ、ほら、また。
さんざんいためつけておいて、最後にどうして。
(どうしてそんなに優しくくちづけるの)
それさえなければ、私はあなたを思いきり罵って貶して、拒絶できたはずなのに。
くるしい。くるしい。呼吸さえもままならない。なのに、どこか心地好い。
死因予定
あなたという羊水の中で、私はまもなく溺死する。