『………やばい…』


7月、それは期末テストの月である。
制服が夏服に変わって、空気が蒸し蒸ししてきて、空が高くなる。
ついでにもうすぐ夏休みを控えている。
そして、今週から各部活がテスト期間で原則的に休みになり、わたしは勉強ムードの学校で勉強に追われながら机に突っ伏している。
やばい。
何がって、数学が。
あと理科。
期末テストの範囲広すぎる。
こないだ受験頑張ろうと決めたばかりなのに、すでにやばいとか言っているわたしは馬鹿なのだろう。
夏休み、あゝ夏休み。
もし期末テストで赤点取ったら、夏休みにまで補修が食い込むという地獄が待っている。
ならば全力で赤点を免れなければいけない。
しかし数学という分厚い壁が、わたしの行く手を阻むのだった。


「……何がわかんないの」

『…数学の範囲、ほぼほぼ全部』

「…授業受けてたよね。寝てた?」

『起きてた……』

「……文系脳なんだね」

『たぶんね……』

「……とりあえず、簡単なとこからやれば。ルートの最初のとことか…」

『ルートって√?わたしルートのとこほんとわかんない』

「……図形は?」

『…さらば夏休み……』

「……クロに教えてもらえば。高校も部活は期末テストの期間休みらしいし」

『…黒尾さんは黒尾さんの勉強があるし……』

「クロはちゃんと授業受けて理解してるから大丈夫だって言ってたよ」

『……いや、でも悪いよ…』

「…しのごの言ってる余裕あるの?期末テスト来週の月曜日からだよ。今日何曜日か知ってるよね」

『……金曜日です…』


そう、期末テストは来週の月曜日から。
つまり土日の2日しかわたしには残されていないのである。
数学と理科以外はすでにテスト範囲の復習はしているし不安はないので大丈夫だけど、残り2日で大の苦手の数学と理科がやばすぎる。
理科は多分赤点は免れる自信はある。
問題は数学だ、マウス。


『………』

「…明日泊まりに来なよ」

『……研磨んち?』

「うん。クロ呼んで合宿しよう」

『が、合宿…?』

「土曜の昼から日曜の夕方までみっちり教えてもらいなよ。俺は見てるから」

『え…合宿って…わたしの数学合宿…?』

「そうだよ」


なんじゃそりゃ?
研磨の口から合宿とか言う意外な言葉が出たと思ったら、そんな提案だった。
え、まあ泊まりに行くのはいいけど(研磨んち漫画いっぱいあるし)、黒尾さんにそんな迷惑かけたくないんだけど。


『でもそんなことしたら黒尾さんが迷惑じゃ…』

「大丈夫だよ。クロはテストの勉強とか前日にちょっとやるくらいだし、昨日も河原でバレーしてたから」


黒尾さん頭いいんだなーとか呑気なことしか頭に浮かんでこない。
なんで研磨、こんなにわたしに勉強させたがるんだろう。


『珍しいね、研磨がそんなこと言うの』

「…今のうちからちゃんと勉強しとかないと、絶対受験間際になって大騒ぎになるから」

『……』

「……なまえには音駒受かってもらわないと困るし…」

『!』


研磨、そんなにわたしのこと……。
ジーン、と胸のあたりがあったかくなる。


『…合宿、しよう』

「…うん」

『お世話になります』

「…クロと母さんには俺から言っとくから」

『ありがと、研磨』

「…べつに……」


今すぐ研磨を抱きしめてみたくなったけど、多分しばかれるのでやめておく。
研磨と仲良くなれてほんと良かった、と、春のクラス替えをした先生に感謝した。
どの先生かわかんないけど。


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