「おはよ、なまえ」

『研磨、おはよ』


月曜日、今週のジャンプ当番は研磨なのでわたしはジャンプを買わずに登校した。
それから、放課後の部活には参加しているけど朝練には行かなくなった研磨が登校してくる。
背負っているリュックにはジャンプが入ってるはずだ。
研磨が読み終わったら借りよう、と思いながら、椅子に座る研磨を眺めた。


「ジャンプ、先読む?」

『え、いいよ研磨が読んだ後で』

「そう?」

『うん』

「…元気?」

『え、うん』

「ならいいけど…元気なさそうに見えたから」

『元気だよ?』

「大方、クロが負けて落ち込んでるんじゃないかとか俺にクロのこと好きだって言ったことが恥ずかしくなってきたとかで悩んでるのかと思ったけど」


げ、なにもかも見透かされているではないか。
元気がないってわけじゃないけど、昨日の今日でどんな顔して研磨に会えばいいかちょっと変わらなかっただけだ。
そりゃ恥ずかしいに決まってるだろう、初めて恋とかいうものをしたと自覚したばかりなんだから。


「クロ、べつに普通だったよ」

『そうなの?』

「うん。8月になったら春高の予選も始まるし…もう次見てる感じだった」

『…そっか』

「うん」

『……あ、あのさ、言ってないよね?その…』

「なまえがクロのこと好きだってこと?言うわけないじゃん」

『…だよね、うん…秘密で』

「ん、秘密」


なんか、インターハイとか予選とかあったばかりなのに、8月になったらもう春高の予選とか始まるんだ。
なんか、忙しないなぁと思った。


『春高って大きい大会だよね?春の高校バレー、だっけ。春にあるの?』

「昔は3月だったらしいけど、今は1月。3月だと三年生が卒業しちゃって出れないから、出れるように1月になったんだって」

『へえ…じゃあ冬じゃんね、冬高』

「うーん…まあ伝統とかそういうのでそのまま受け継いだんじゃないの」

『ふーん……』


一月は冬なのに……としばらくその違和感が消えなかった。
でもまあ春高っていう名前と大会が大切なのであって、別に何月にやろうと関係ないんだろう。


『……わたしも受験がんばろ』

「…音駒?」

『うん。がんばって音駒入る』

「まぁ…音駒は頑張らなくても入れるのが普通だけどね……」

『うるさいなぁ…数学だけだもん、問題は。数学がんばって、他はキープして、どうにか受かってみせるんだ』

「…うん。俺も落ちないように適当に勉強する」

『嫌味かきさま』

「違うよ……クロもなまえも同じ学校だったら、ちょっとは楽しそうだから」

『…研磨がデレた…』

「……もう言わないから」

『あ、ごめんごめん!うん、一緒に音駒行こうね、研磨』


うん、と少し笑って頷いてくれた研磨を見て、わたしも笑った。
まぁ落ちてもいいやとか思っていたけど、ちゃんとがんばろう。
ユカとリツコとは高校離れることになるけど、2人と縁が切れることはないだろうし大丈夫。
決めたのだ、わたしはわたしのできることをしようと。
それがいつか、少しでも黒尾さんの支えになれたら、って。


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