6月は結構好きな月である。
みんなが鬱陶しくて嫌いだという雨も、わたしは好きだった。
お気に入りの傘がある、とか可愛い理由ではないけど。
使ってるのは前に買った、持ち手の部分がグレーのしましま柄なだけの透明の傘だし、ローファーや靴下が濡れるのはイライラするし、雨の日は偏頭痛もあるけど、それでも雨を嫌いにはならなかった。
雨の日の薄暗い空とか、雨の匂いとか、傘の中に閉じ込められてるみたいな雨の音とか、水たまりを踏む感じとか。
だから梅雨に入る6月も結構好き、だけど、一番好きなのは冬の雨だ。
冷たい匂いがするところが好き。
季節の中で冬が一番好きだからかもしれない。
そう言うと、みんな顔をしかめるけど。


「なまえ」

『ん?』

「クロにラインした?インターハイ予選見にいくって」

『したよ、昨日』


面倒くさがりの担任によって席替えのないまま6月になったので、わたしと研磨は隣同士のままである。
普通にありがたい。
一緒にポッキー食べながら、研磨がスマホ見ながら言う。
いま高校では、インターハイ予選なるものを今週末に控えているのだ。
黒尾さんのいる音駒は地区予選を見事勝ち抜き、そのインターハイ予選への出場が決まっている。
あと3日ほどで、全国へ行くか行けないかが決まる大会の日なのだ。
東京からは2チーム全国へ行けるらしい。
そのしくみはよくわからないけど、かなり大きな舞台であるということはわかるので、わたしと研磨は日曜日に開催されるその試合を一緒に見にいくことにしたのだ。
東京ではインターハイ予選は毎週日曜日に開催されるらしいとこの前教えてもらった。

ちなみに、研磨のいるうちのバレー部も中学総体の予選に参加したけど、普通に負けてしまった。


『勝つかな?』

「まあ一回戦は勝つでしょ」

『そっか』

「うん。でも三回戦ですごい強いとこと当たるって言ってたから、三回戦はわかんないね」

『ふーん…音駒って昔すごい強かったんだよね?今は強くないの?』

「うーん…まあ弱くはないんじゃないの。でもそこまで強くもないみたいだよ」

『黒尾さんいっつも言ってるもんね、俺の代で返り咲くとか』

「クロくさいこと言うの好きだから……」

『研磨が入るの待ってるのかな?返り咲くのには研磨の力が必要なんだ、みたいな』

「少年マンガの読みすぎだよ」

『へへ』

「…なんか先輩とそりが合わないとか、前に言ってた」

『黒尾さんが?』

「うん」

『そうなんだ…』


そういえば、黒尾さんはわたしにとっては先輩だけど、高校では一年生だし、誰かの後輩なんだな、なんて思った。
中学の部活とは雰囲気が違う、と前に黒尾さんが言っていたのを思い出して、嫌な思いしてないといいなぁと心の中で思う。
音駒は生徒数多いし、人が増えればいろんな人もいて、きっと気が合わないのは仕方ないんだろうけど。
知ってる人が嫌な思いしてるところなんて、見たいわけがないから。


『研磨も、高校でバレー続けるんでしょ?』

「んー…まあ、クロがやれって言うから…俺いないと困るだろうし」

『じゃあ引退しても練習しないと怒られるね』

「…めんどくさいよね」

『がんばれよ研磨!』

「ゲ…今のクロの真似?似てない…」

『似てたでしょ、ニタニタ顔とか』

「似てないよ…」


そうか、似てないか。
ちょっと自信あったのに、黒尾さんのモノマネ。


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