『ネコ飼っていい?』
「いいわよ」
という短い会話をした昨日の夜。
黒尾先輩んちにいる子ネコをわたしの家で引き取ることが決まった。


『研磨、ネコ飼っていいって言われたんだけど』

「よかったね」

『うん』


翌朝、早速朝練終わりの研磨に報告した。
隣の席に腰掛けて眠そうにしている研磨を見ながら、昨日初めて会った小さな子ネコを思い出す。
思い出しただけでかわいい。


『だから、黒尾先輩にそのことといつ貰いに行けばいいか聞いといてくれる?』

「……めんどくさい」

『聞くだけじゃん』

「自分で聞いて」

『連絡先知らないし』


どんだけ面倒くさがりなんだ研磨。
わたしが黒尾先輩に直接伝えるとなると、また来週の水曜日に偶然会うのを待つか音駒高校まで会いに行くか家まで訪ねるか、しか方法がない。
だから研磨なら毎日のように会ってそうだし連絡先も知ってるだろうし、と頼んだのに即座に断られた。
ちょっとくらい手を貸してくれよ、と思っていたら、研磨がスマホを取り出して、なにやら操作し始める。
それから、研磨はスマホをわたしに渡してきた。


『え、なに』

「クロの連絡先」


何故そうなったのかはわからないけど、研磨は自分のスマホの電話帳に入っている、黒尾先輩の連絡先のページを開いて渡してきたのだ。
受け取ったスマホに表示されている、見慣れない番号とメアド。
不思議に思いながら研磨を見ると、研磨はゲームを始めていた。


「そのままなまえのスマホに登録していいから。自分で連絡して」


目も合わせずにそう言った研磨。
それによってこのスマホの意味を知る。
子ネコの連絡を取るために黒尾先輩の連絡先を教えてくれたのだと。
研磨が連絡を取り次いでくれないなら仕方ないか、と、自分のスマホを取り出して電話帳を開く。
新規登録のとこに、研磨のスマホに表示されてる黒尾先輩の連絡先を打ち込んで行って、登録した。
黒尾先輩って、下の名前鉄朗っていうんだ、と初めて知った。


『ありがと、研磨』

「ん」


研磨にスマホを返してから、自分のスマホを使ってラインを開く。
新しく友だちに追加された黒尾先輩の名前をタップして、トーク画面を開いた。


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みょうじなまえです。
研磨に連絡先教えてもらいました。
勝手にすみません。
ねこ飼えることになったので
いつ貰いに行けばいいか教えてください


りょーかい。
土曜日研磨んち行くだろ?
そんときでいいよ。
連絡ありがとな

じゃあ土曜日に貰いに行きます。
猫って電車乗れるんですかね?


多分キャリーバッグに
いれたら乗れると思う。
キャリーバッグは用意しとくから

ありがとうございます


こちらこそ( ´ ▽ ` )ノ

( ^-^ )


あ、ねこの名前
考えといてやってね

名前ないんですか?


飼うわけじゃないから
決めてなかった。
研磨はクロ2号って呼んでたけど

かわいそうですね。
考えときます


かわいそうとは
どういう意味かな?

なんでもないです


俺が決めていい?

いいですよ


てっちゃん

いやです


くろてつ

いやです


おてつ

黒尾先輩に
ちなまなくていいです


(;_;)

泣かないでください


あ、じゃあ
アジュムエルダ先生は?

かわいくないので
いやです


アジュムエルダ好きだろ

好きですけど


じゃあ研磨2号

いやです。
やっぱりわたしが決めます


決めたら教えてネ

わかりました


じゃ
またなー

はい、また


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「ねぇ」

『ん?』


ちょうど黒尾先輩とのラインのやりとりが終わったとき、研磨が話しかけてきた。
スマホを暗転させて制服のポケットに仕舞う。


「いつまでクロとラインしてんの」

『いま終わったよ』

「朝から昼までしてたんだ」

『うん』


そう、研磨のいうとおり今は既に昼休みである。
朝黒尾先輩に第1投のラインを送ってから、なんやかんやとやりとりが続き授業中や休み時間にちょくちょく返信していたら、いつの間にか昼休みになっていた。
長いことラインしていたせいか、研磨が同じ人とは思えないと言いたげな目で見てくる。
確かに研磨のラインは短くて必要最低限なので、こうしてやりとりがだらだら続くのが面倒くさいと思ってるんだろう。


『黒尾先輩って顔文字とか使うんだね』

「ああ…たまに使うよね。ふざけたときとか」

『うん、意外』

「俺はなまえが絵文字も顔文字もあんまり使わない方が意外だったけど」

『そう?わたしもたまには使うよ』

「知ってる」

『研磨はスタンプ以外なにも使わないよね、顔文字も』

「なまえこそ、どらいもんのスタンプしか使わないじゃん」

『好きなんだよドラちゃんが』

「(ドラちゃん呼び……)」

『あのフォルムと顔のかわいさとなんだかんだ言いながら結局のべ太を助けてあげる優しさがわたしの心をわし掴んで離さない』

「…好きなんだね」

『大好きなんだよ』


なんだろうこの不毛な会話。
だが嫌いじゃない。



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・どらいもん…未来から来た某青い猫型ロボット。
・のべ太…メガネでだめだめな小学生。

※黒尾さんがスマホ使ってるのは捏造です(原作ではガラケー)。
さらっと流していただけるとありがたいですが、この捏造設定ずっと続きます。


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