ユカとリツコと観た映画は、結局”HE〜恋に落ちるかもしれねぇ〜”だった。 ジャンケンで負けたわたしは日曜日に観たかった”金魂〜さらばぼくらの金さん〜”を観ることはできず、つまんない意味のわかんない恋愛映画(しかも洋画)を観せられたのだ。 映画の内容覚えてないし八割寝てたし、もはやリツコの買ったポップコーン食べるために行ったようなものである。 それからカラオケとか行ってリツコの家に行って、結局泊まることになって、今日の月曜日、リツコの家から直接学校に来た。 リツコの替えの制服借りて。 『あ、研磨おはよー』 「おはよ」 それで自分の席でさっきコンビニで買ってきたジャンプ読んでたら、朝練終わりの研磨が隣の席に座った。 朝の挨拶に短く返事をしてくれた研磨は、相変わらず猫背で猫みたいな目をわたしの持ってるジャンプに向ける。 「やっぱり買ったんだ」 『うん』 「…あとで貸して」 『いーよ』 「なまえが毎週買ってるから、俺最近ジャンプ買ってない」 『確かに最近そーだね』 ゲーム機を作動させながら研磨が言う。 そういえばここ何週間か、わたしが研磨にジャンプ貸してるなーと思い出した。 「……来週は俺買うよ」 『貸してくれるの?』 「うん」 『やった、ありがと』 「うん」 『250円浮いたわ』 「俺もなまえに借りるようになってからちょっと金貯まったよ」 『いーなそれ』 「…なまえにばっか買わせてたら、そのうちなんか文句言われそう」 言わないけど文句なんて、とちょっと笑う。 だって研磨と仲良くなる前は毎週自分で買ってたし、むしろ仲良くなってからは研磨がたまにジャンプ買って読ませてくれるので、250円浮くことが多くて嬉しいのだ。 でも確かに片方がジャンプ買って貸す、っていうのは借りる方はお金のこと気にするかも、と思った。 『じゃ、順番に買う?』 「隔週で買うってこと?」 『うん、今週わたしが買って研磨に貸して、来週研磨が買ってわたしに貸すでしょ。再来週はわたし、その次は研磨、みたいな』 「いいねそれ」 『いいでしょ』 「うん」 ということで、ジャンプ会議は幕を閉じた。 週ごとに順番に買って貸し合いっこする、ということで。 わたし的に月に500円も浮くということになってものすごくラッキーだ。 読み終わったジャンプを研磨の机の上に置くと、顔を上げた研磨と短い間だけ目が合った。 「…なまえ、土曜日ヒマ?」 『土曜日?…うん、ヒマ』 「母さんと父さんがなまえ連れて来いってうるさいんだけど…鍋食べに来る?」 先週行ったばかりの研磨家にまた土曜日に招かれた。 しかも今回はお父さんもいるそうだ。 ちょっと気まずいなと思ったけど、わたしが訪ねたことですごく喜んでた研磨のお母さんを思い出して、わたしは頷いた。 『研磨がいいなら行く』 「いいよ」 ということで、今週の土曜日も研磨の家にお邪魔することになった。 二回目だけど、お菓子とか持っていくべきだろうか。 ケーキ作るのは好きだけど、持って行きすぎても迷惑かな、ていうか鍋って冬にするもんじゃないんだ、まあ鍋大好きだけど、お菓子何作ろうかな、とか、いろいろと考えながら、ジャンプを開いた研磨を見た。
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