三年生だった先輩たちが卒業して、二年生だったわたしたちはこの中学の最高学年になった。 なんだか、一つ年上のだけの先輩たちはすごく大人っぽく見えたのに、実際自分が三年生になってみると何も変わらなくて、もちろん大人っぽくなんてなってなくて、不思議な感じだ。 中学三年生、受験生と呼ばれる人たちの仲間入りをしてしまったのだなーなんて、花の散った桜の木を見て思う。 でもまだ四月だし、三年生になったばかりのわたしたちにはまだまだ受験なんて関係のない話題だろうと思っていた。 でも、周りの友達が口々に話すのはどの高校に進むのかとか、勉強や成績がどうのとか、そんな話ばかり。 「なまえは?どの高校か決めてるの?」 『わたしは音駒だよ。一番家から近いし受験も簡単だって聞くから』 「やる気ないねぇ、あんたは。ちょっと頑張って制服の可愛い高校行こう!とか思わないの?」 『音駒も可愛いじゃん、制服。セーラーっぽくて』 「あたしは絶対、ブレザーの制服がいい!だからブレザーで可愛い制服のとこ行くんだ〜」 あっそ、好きにしろ。 と思いながら、ふーん、とだけ返事をして窓の外を見る。 受験とかまだまだ先だし、1年くらい時間はあるのになんで今受験の話をしなきゃいけないのか、意味がわからない。 わたしはそんな話より、最近佳境を迎えてる少年マンガの話とか、そういうくだらない話がしたいのに。 最近つまらないことばっかりだ。 友達のユカもリツコも受験だの制服だのブレザーだのってそればっかり。 そういう話が終わったら、今度は男の話になる。 あの先輩かっこよかったよね、とか、あの子あの人と付き合ってんだって、とか。 わたしはそんな他人の恋愛事情とかどうでもいい。 誰が誰と付き合っていたってわたしには全く関係ないし興味もない。 わたしはそんな話より、最近ジャンプで連載が始まった新しい少年マンガの話とか、そういうくだらない話がしたい。 「鐘鳴ったぞー、席つけー」 教室に入ってきた国語の先生のその声に、わたしの机の周りに集まってたユカとリツコが自分の席に戻っていく。 つまらない休み時間だったな、と思いながら机の中から教科書を出して、何となく隣を見た。 わたしの隣の席は、孤爪くんという男子で、バレー部に所属しているらしい。 初めて同じクラスになった孤爪くんとはまだ一度も話したことはない。 いつも俯いてて長めの黒髪で顔を隠しているし、猫背だから顔もあまり見たことない。 きっと人見知りなんだと思う。 まあ別に隣の席だからって仲良くしたいと思ってるわけでもないので、興味もなくなって黒板に目をやった。 早く授業終わらないかな。 始まったばかりだけど、もう嫌気がさしていた。
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