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体操服の汚れは、落ちた。雄英職員室の洗濯機と洗剤により。もう綺麗さっぱり。絵の具は、消えた。嬉しきかな。

『オッス!おはよう、轟くん。ご機嫌麗しゅう!』
「…おはよう」

職員室でご飯を食べ、体操服を物干し竿に干させてもらった。そして教室に行くと、轟くんがいた。一人で。
彼の朝は早い。まあ。わたしの方が、早いが。

『轟くんは、早起きだね。いいことだよ。それは。早起きは三文の徳ってヤツさ!規則正しいことは、イイコト!イチゴショートくんは、健康だ』
「身剣の方が、いつも早いだろ…何かしてるのか」
『何か?それは、どういう意味。ワッツ、ミーン!何かしてるのか!それは…うーん。目覚ましで、起きてるよ!ジリリリリリ!ってやつなんだけど』
「違う。必要以上に早く登校して、何してんだ」
『OH!そういうことでしたか。いやいや、気付かなくて。頭悪くて。バカモンで、ごめんよ。そうだね。実は、鍛錬をしてるんだよ!朝にね。そのため、早く登校しているというわけさ。実に、有意義だよ。轟くんも今度、どう?』
「…遠慮しておく。俺と身剣では、戦闘スタイルが違うだろ」
『た!確かに。それは、そうだよ!イチゴショートくん。わたしは、近距離戦闘を得意とするんだけども。というか、それしか手がないのだ。が、しかし!イチゴショートくんは、アレだね。遠距離とか中距離からの、一網打尽!いいなあ。いい個性だよ。お強い!正直、歯が立たないよ。刃!刀だけに。ぷくくく。うまい。我ながら、アッパレじゃ。そうだ!まだみんな来ないし。暇つぶしに、しりとりしようよ!親睦、深めない?わたしと!深海の如く!共に、深海魚になろうではないか!』
「…やりたいなら。やるか?」
『よっしゃー!やりましょう。気が済むまで、やりやしょう!滾る!嬉しきかな、オトモダチとは。素晴らしい!では、出陣!スタート。ええと…イチゴショートくんの、”い”からね。わたしからでいい?ダメとは言わせないよ。いくよ!い…いかづち!』

移動して、轟くんの前の席に座る。誰の席だろうか。借りますぞ。
轟くんは、真顔で考えるように目線を上に移した。よく見ると…端正!男前。俗に言う、イケメンってやつだった。

「…チリ」
『リ!り…リモートコントローラー!』
「…”あ”か?”ら”か?」
『うーん。これは、難しい問題だね。難問に、ぶつかった…しかし!壁は、乗り越えるためにあるのよ。じゃあ、”あ”にしよう!母音を優先してやろう!”あ”だよ!ら、は無視!ら!ら!ららーらー!ららーらー!らーらーらー!今日も明日もあなたにー!あえーないー…』
「…安土桃山」
『モモヤマ!”ま”…ま、枕営業!』
「……う…ウズラ」
『ら…裸族!』
「く…薬」
『り?り…リバイバル!』
「る…ルールブック」
『く!く…靴下!』

がらり。ドアが開く。
しりとりの途中だけど、顔を上げてドアを見た。百ちゃんが立っている。少し、びっくりした顔で。

『おはよう百ちゃん!いいお天気だね。グッドモーニング!今日も見目麗しい!』
「おはよう…何してらっしゃるの?お二人とも……」
『しりとりだよ!しりとり、知ってる?百ちゃんもする?尻を取るんだよ!しようよ!三人ですると、楽しいぞー!!オラ、ワクワクすっぞ!』
「しりとりくらい、知ってますわ。よろしいんですの?私もお邪魔して…」
『もちろん。モチのロンですよ!ね。ね、イチゴショートくん。三人でやろうよ。三人で、お互いの尻を取り合おう!これは…これは、楽しくなるぞ。俄然、燃えてきた!ファイヤー!!』
「…身剣って、変な奴だな……」
「柄叉さんに、常識は通用しませんわ。けれど、良い人なんです。会話も、ちゃんと成立しますし」
『も…百ちゃん!なんてこった…ここにも、天使が!?いけない。A組には、天使が多すぎるよ!これは。これは、危ない。鼻血が出ちゃうよ。はあはあ!百ちゃん。好きだ!かわいい!どこに、羽を落としてきたの?教えて!今すぐ取ってくるから。ああ!でも、ダメだ。そんなことしたら。百ちゃんが、天界へ帰ってしまう!そんなあ。そんなのって、ないよ…こんなに大好きなのに…引き裂かれるなんて!運命というのは、なんて残酷なんだ!』
「これ…会話、成立してるのか…?」

頭を抱えると、轟くんは不思議そうに言った。
轟くんの斜め後ろの席に、百ちゃんが腰掛ける。はあ…カワイイなあ。もう。なんてけしからん。けしからん、この可愛さ。
これがあるから、生きていけると言ってもいい。ありがとう。良い、薬です!

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