04

わたしの個性。
それは刀。日本刀。ぎらりと光る鈍色の刃物。薄っぺらくて強靭な細長い刃。が、両手の手のひらから生えてくる。にゅっと。
わたしの骨をベースに形成される刀。本物さながらの日本刀。だと、じっちゃんが言ってた。
サムライという生き物。日本の太古、存在した武士。
わたしがそれ。今、わたしはそれ。
手のひらから生えてくる日本刀を握って戦う。
入試ではロボを斬って斬って斬りまくった。
わたしの刀は自由に収納できる。腕の中に。
わたしの刀は折れてもまた体の中で作られる。延々と。
わたしの刀は長さも調節できる。最小5センチ。最大150センチ。
わたしの刀は強い。戦いに向いている。
がしかし。体力テストには、ムイテナイ。


『目指せ甲子園!!』
「20メートル」

わたしの記録。ソフトボール投げの。
ザコだ!!これじゃ甲子園なんて夢のまた夢だ!

「甲子園は無理だな」

記録の表示される電子機器を片手に、相澤先生が言う。
追い討ちが好きだなあこの人は。
全く呆れちゃうよ。

「おめぇ個性は?使わねえの?」
『全く役にたたない。困った。詰んだ。世界は残酷だ…でも美しい』
「おめー変な奴だなー」

赤髪の知らないクラスメイトが笑う。

『いい笑顔だね。百点満点の笑顔!ぜひオトモダチになろう!きっと苦労はさせないから』
「すげえ苦労させられそうだけど。面白そうだし、いいぜ!俺ぁ切島鋭児郎!!」
『キリシマくん。アチキは身剣柄叉。よろしく、エイちゃん!』
「エイちゃん!?ま、まぁいいや。身剣な、よろしく」

エイちゃん、いい人じゃないか。
髪型ガッチガチでビックリしたが、人は見かけで判断しちゃいけない!
いい奴だ、切島くん。

「そこ。終わったら喋ってないで次に行け」
「あ、スンマセン!」
『よし…いっちょかましてやろう。伝説に。生ける伝説となるのだワラワわ!』
「頑張ろうな!」

さっきカッチョいい個性を披露した相澤先生に怒られた。ので駆け足で次の種目へ。
わたしは今の所ビックリな記録を出せていない。去年と大して変りばえしない。問題である。
相澤先生の個性はカッチョよかった。あの首のマフラーみたいなのも使ってカッチョよかった。
イレイザーヘッドというヒーローらしい。いいなあヒーロー。
わたしもなりたい。


(お茶子視点)

『おや。緑谷くんではないですか。さっきソフトボール投げで謎の負傷をしながらも超人的な記録を残したレジェンド!緑谷くんではないですか』
「ひいっ身剣さん…!」

知り合ったクラスメイト中ダントツの変人、身剣柄叉ちゃん。
つねにニコニコしててとってもかわいいのに、言動が常軌を逸している子だ。
けど、悪い人じゃないし、むしろ面白くていい人!なので友達になった。
うれしい。
そんな柄叉ちゃんは、持久走の準備中、緑谷くんに絡み始めた。
ものすごく謎なセリフで。緑谷くん、めっちゃ怯えてる。

『怪我は大丈夫?痛そう。壊死?壊死した?かわいそう…泣きそう』
「え、壊死はしてな…ええ!な、泣かないでください!!」
『さっきの緑谷くんは、パワフルだったね。カッチョいい個性だ。アメイジング。アメイジング緑谷!』
「あ、ああありがとう…」
『アァメージーィイングレェーーイス〜…』
「ひっ、歌い出した!!?」

柄叉ちゃんが唐突にアメイジンググレースを口ずさみ出した。
緑谷くんはものすごくビビっている。
二人の様子がものすごく面白くて笑ってしまう。
柄叉ちゃん、やっぱおもろい…。

『でも!マグロの解体ショーならわたしだって負けないんだからね。勘違いしないで』
「ひええ…マグロの解体ショー…?何言ってるのこの人…僕マグロ捌けないよ……しかもなんでツンデレみたいな口調なんだよ、怖いよ…」
『それに玉ねぎを空中でみじん切りにする種目があったら、わたしがナンバーワンなのだから。命をかけて!』
「すごい限定的な種目だ、そんな種目絶対無い…ていうか命かけなくていいよ…」
『ヒーローはいつだって命がけさ!スーパー緑谷くん。お互い頑張ろう』
「すすスーパー緑谷!?」
「ブハッ!!」

耐え切れず吹き出してしまった。
隣にいた八百万さんが、ビックリした顔で私を見てくる…。

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