01

(出久視点)

『オッス、ご機嫌いかが?』
「え…!?」

晴れの日。待ちに待った雄英入学、その初日。
かっちゃんと、入試の実技試験で邂逅したキツイ眼鏡の男子とは、同じクラスじゃなかったらいいな…なんて思いながら、A組のドでかいドアを開けようと、手をかけた。
ら、突然背後からそんな変なセリフをかけられて、僕の肩は大げさに震える。
何いまの、 変なセリフ。
恐る恐る振り返る。
僕の後ろには、ノーネクタイにシャツのボタンを2つ開け、ブレザーの前のボタンもラフに開け放った、女子が立っていた。
かわいい笑顔で。
女子に笑いかけられたことにより、僕の胸はドコッと殴られたような衝撃を受ける。

『グッドモーニング!いい朝だね』
「へあ!?あ、は、はい、あ、その」
『どーしたの、様子がおかしい。は、まさか…これが世間で噂の、コミュ障ってやつ?うわー初めて見ました。拙者、感激!握手してください!』
「へ!?せ、拙者!?コミュッ!?いやそのっうわあアクシュッ!!?」

ええええ何!?何この人!?
意味のわからないことをペラペラ喋る女子は、ニコニコ笑いながらガシッと僕の手を握った。両手で。
えっ、手、冷た!手の甲、色、白!
え、ていうか僕、今サラッと貶されなかった?確かにコミュ障だけど…。

『ここで会ったが百年目!』
「へいっ!?ぼ、僕、敵!?」
『クラスメイトかな?仲良くしよう。そう、フレンドリーに!オトモダチになりやしょう!』
「あっ、はっ、はい!?おと、オトモダチ…はっ!お友達!!ぼ、僕でよければよ、よろっ、喜んで!」
『オーマイガー!こりゃたまげた、早速心の友をゲットだぜ!ピッカッチュウ!』

薄々、感じてはいたけど。
僕の右手を両手で握って、ブンブンと振り回しているこの女子。
ヤバい人なんじゃ……。
破綻しているよ。完全に。
何故そんなかわいい笑顔をして、口から出る発言は全て常軌を逸しているのですか?
怖い。クラスメイト?ってことは、この人A組だよな…雄英怖い。ヒーロー科、怖い。
僕、やってけるのかな…。

『ワッチュワネーム!』
「ワッチュ…あ、僕の名前…は、みみ緑谷、出久くく…!」
『みみみどりや、いずくくく!?す…すげー名前だ!こりゃスッゲェ!!アメイジング!カッケー!!』
「いやっちがっ!違いまふ!み、緑谷、出久です!」
『あ、なんだ。じゃあ、ミクって呼ぶね!』
「はぁいっ!?み、ミク!?どこから!?」
『緑谷のミ、出久のク!略してミク。キュートでポップでメロディアス!』

この人やべえ、本当のやべえ人だ。
どうしよう。逃げたい。顔はかわいいのに、どうしようイカれてる。

「でっ…できれば、普通に…!普通に、呼んで欲しいなぁ、なんて…」
『御意』
「御意!?」
『わたしの名前は、身剣柄叉。マイネームイズ柄叉・身剣』
「な、なんで二回言うの…?」
『気安くウンコとでも呼んでくれたまえ!』
「ううううっうううウンコ!?」
『じゃあ緑谷くん。アディオス!いい旅を!!』
「た、旅…!?」

ウン…じゃなく、身剣さん。
身剣さんは、支離滅裂でハチャメチャな捨て台詞を吐くと、僕の手を離して右手で敬礼した。
そしてその次の瞬間、必要以上の力で教室のドアを開けた。
スパァァン!!と教室・廊下・フロアに、ドアの開いた音が響き渡った。

『うわ。なんかめっちゃ見られてる…やべえ緊張してきた。いやダメだ。緊張しちゃだめだ。逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ!オトモダチ作りは初日が大切だって、ばっちゃん言ってた。そうさ目指せ友達100人!やってやる!じっちゃんの名にかけて!!』

ダメだ、ダメだよこの人。
この人を世間に解き放っちゃダメだ!
ヤバいよ絶対ヤバいよ。
なんで?ばっちゃんが言ってたんじゃないの?じっちゃんどこから来たの?100人は無理だよ。絶対大抵の人に避けられるよ君。
えらいとこに来てしまった。雄英、こんな人ばっかりだったらどうしよう。
やっていける気がしない。

『お頼み申ぉおす!!』

教卓近くに立った身剣さんが、背中に両手を回して叫んだ。
道場破り始めたよ。
みんな引いてるよ。かっちゃんすらポカンとしているよ。
うわ、ていうかかっちゃんと同じクラス!ていうか、眼鏡の男子もいる。
ツートップ…いや、さっき知り合ったばかりの身剣さんも加えさせてもらおう。
スリートップか…頑張らなきゃ。

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