俺の背中をマッサージしてくれていた彼女が、ひっくり返った。
うぎゃ、と馬鹿丸出しの悲鳴を上げて俺の背中から落ちる。
床に頭をぶつけたらしく、頭を抱えて丸まった。
「なまえ、大丈夫か」
『いたい……』
「なんで落ちるんだよ」
『力弱いって言うから、踏んであげようと思って…』
起き上がり彼女の頭の安否を確かめる。
たんこぶもできていないし、大丈夫そうだ。
涙目のなまえの頭を撫でてやると、へらりと気の抜けた笑顔を向けられた。
「今度は俺がマッサージしてやるよ」
『え、いい』
「肩凝ったって言ってたろ」
『やだ。えろいことするもん』
その通りだ。
これまでに何度も、マッサージしてやると言って身体を弄りそういう事に及んできたので、流石に覚えたらしい。
小さな身体を膝の間に招き入れ、抱き締めてやる。
「俺とエロいことすんの、嫌なの?」
『明日試合だからやだ』
「一回しかしねぇって」
『うそ、いっつも一回って言うけど一回で終わったことない』
最近まで俺の口車に簡単に乗ってたくせに、なんか学習してやがる。
確かにヤッた翌日は、腰が怠いのか、俺が噛み付くせいで首や背中が痛いのか、無理な体位をさせるせいで筋肉痛なのか、まあ全部だろうが、なまえは上手く動けなくなる。
いつも以上に歩くのが遅くなり、いつも以上に不器用になる。
そして身体のあちこちに俺の付けるキスマークや歯型がくっきり残るので、部員たちにからかわれる。
まあ俺も程々にしてやれよと怒られるのだが。
「今日は本当に一回だけだから。な」
『な。じゃない。しない』
「明日試合だぜ?激励してくんねぇの?」
『してるよ、口とかで』
「あんま嫌がってると、この前みたいに無理やりしちゃおうかなぁ」
信じられない、という顔で見上げられる。
この前、しばらくお預けを食らっていて溜まっていた挙句、風呂上がりに俺のシャツ一枚という刺激的な格好で呑気にほかほかしてやがったこいつを、理性をポイしてほとんど無理やり行為に及んだのだが、余程しんどかったのだろう。
『なんで。やだよ』
「素直にやらしてくんねぇからだろ?」
『鉄が悪いんでしょ。毎回一回で終わって、もっと優しくしてくれたら、鉄のしたいときにさせてあげるのに』
鉄のしたいときにさせてあげる。
その発言にムラッと胸と下半身が騒ぐ。
抱き締めているままの体制でなまえを抱き上げ、ベッドに移動した。
優しく布団の上に下ろして、覆い被さる。
「でもお前さ、いじめられんの好きだろ」
『す、好きなわけないでしょ』
「いっつも、口ではイヤイヤ言いながら、こっちはびしょびしょにしてるくせに」
脚を開かせ、真ん中を撫でると、なまえはふるっと小さく震えた。
本当は知っているのだ。
こいつが嫌とか言いながら、本当は嫌がってないことを。
『明日、動けなくなる』
「手加減してやる」
『うそ、ぜったいうそ』
「…善処する」
『じゃあ、噛まないって、一回だけって、約束して?』
「ん?それは無理」
こいつの柔らかい肌に触れていたら、噛み付きたくなるのだから仕方ない。
一回だけってのも、こんだけお預け食らってんだから多分無理。
髪の毛を撫でながら、柔らかい唇を甘噛みすると、なまえは諦めたのか目を瞑った。